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氷室冴子とその時代

ティーン時代に大好きで読みふけった作家さんです。鬼籍に入られて早10年…。もっとたくさんの作品を読みたかった…。そんな氷室冴子先生の作品やインタビューから、生前の先生がどう生きて、何を考えていたのか。そんな事を綴った本です。

少女小説といえば

最近は、たくさんのレーベルが出されるようになり、「小説家になろう」のように、アマチュアでも作品を公開できるようになりました。

が、そのレーベルの老舗…コバルト文庫は最近は数ヶ月に一回…どうしても、な作品くらいしか出版されなくなってしまいました。私がティーンの頃は、代表格のレーベルだったんですけどね…。

直木賞作家となった唯川恵先生もコバルト文庫出身。新井素子先生や久美沙織先生…藤本ひとみ先生など、今でもご活躍されている先生が綺羅星のごとく…。

そんな中でも、一際人気だったのが、氷室冴子先生でした。

私と氷室冴子先生

多分最初に名前を知ったのは、小説本体ではなかったりします。

「タッチ」の劇場版…1だったかな?の同時上映で「恋する女たち」という、斉藤由貴さん主演の映画があり、その原作者だったのです。いや…内容は…あまり覚えてなく…だって私はタッチが見たくて行っていたので(笑)。

ただ、斉藤由貴さんを中心に、乙女チックな内容だった…気が。何故かこの原作も読んだ記憶も…小学生だ、仕方ない←。

その後、高校進学し、友達に教えてもらった「ざ・ちぇんじ!」にハマり、原作も…となったら、あら面白い(笑)。

そこから読み漁り人生がはじまりました。

おすすめ作品

どれもオススメ!なのですが。この辺りは読むべき!なものをいくつかピックアップしたいと。まあ、全部有名すぎる作品ですけれど。

なんて素敵にジャパネスク

言わずとしれた氷室冴子先生といえばこれ(笑)。

平安時代、大貴族の姫・瑠璃姫の型破りな活躍を描いた作品。幼馴染の高彬との結婚前と結婚後の感じで話は2部作…みたいですよね。

氷室冴子の世界では、この作品の作られた背景を紐解いていますが…ああ、瑠璃姫の初期、「結婚なんてするかバカヤロー!」な空気は、ご本人のリアルな体験か…(笑)。まあ、今はさほど…ではなくなりましたか、作品が発表された当初は、女の子は25で独身なら行き遅れ…と揶揄され、周りからプレッシャーもあった時代。特に先生のお母様からのプレッシャーは半端なかったようで。作家としてアプラも乗り始め、この人!っていなければ独身でもいいって当たり前だと思うのですが…まあ、そのパワーからあの瑠璃姫が生まれたんだから…。

そんな瑠璃姫も、高彬と結婚後は大人しく…なるはずもなく、東宮位簒奪の騒動に巻き込まれていきます。華やかな鷹男の帝や、美しい藤宮さまなど、個性豊かすぎるキャラクターに、主人公の旦那様である高彬は…頑張れってなるのですが、要所要所でかっこいいので、私は高彬推しです(笑)。「僕にしなよ」は今でも色褪せない名シーンなので。コミックもこのシーンは綺麗だった…。

海がきこえる

高知のとある進学校に、東京から転校してきた少女。学校に馴染めず浮いた存在となっていく彼女が気になる主人公。思春期の脆い空気や土佐の雰囲気、何気ない日常の物語なのですが、余韻に浸る、そんな話です。

オリジナルアニメとしてジブリが製作した同名作品の原作なので、そちらのイメージ強いひともいるかもしれませんね。

大きな展開といえば…ヒロインが東京に向かうシーンですかね。唯一できた友達を騙し、一緒に行かせようとする主人公が、その友人の代わりに一緒に東京に。だが、その東京にも彼女の居場所が無くなっていて…。現実を突きつけられ、結局その後ギクシャクもして…青春だなぁというお話です。

ライジング!

小説でなく、漫画原作なのですか。漫画は藤田和子先生で、華やかで美しい絵の方です。桃花タイフーン!大好きです(笑)。

ダンスがしたくて、レッスンを受けられる学校があるから、となんの知識もなく宮苑歌劇団に入ってしまうヒロイン。独特な歌劇団の制度や雰囲気に戸惑い反発しながら、舞台女優として育っていくという、サクセスストーリーです。

モデルは言わずもがな宝塚歌劇団。この作品の原作の為に、宝塚に引越しまでしたというから、先生のバイタリティの凄さ…。でも、そのおかげで、リアリティ溢れてます。宝塚ファンなら、ああこれはコレかぁと楽しめたり(笑)。

ヒロインが退団後にどうなるのか、そこも楽しいお話です。

未完の大作

余りにも早くお亡くなりになってしまったので、未完となってしまった作品も多々あるのですか、一番悔やまれるのが、これです。

銀の海金の大地

古事記をベースにした、古代転生ファンタジー…。過酷な運命を歯を食いしばって切り開こうとする真秀と、目も見えず、耳も聞こえず話せない、美しい真秀の兄・真澄。そして真秀と運命的出逢う佐保彦を中心に、人々の愛憎が渦巻いていく物語。

全6部の構成で、第1部真秀の章を書き上げた時点で中断、そしてお亡くなりになってしまったので…。

第2章が佐保彦の章であること、そして、主要メンバーは転生し、用明天皇(聖徳太子の父)辺りまでを描くまでバラシといて…。

一体どんな結末を迎えたのかというのも気にはなるのですが。

真秀と佐保彦がいい感じになり、あら…と思ったら、その隙を縫うように佐保の一族が真澄を襲撃し、最悪の兄を失う…で終わるのですよ!真秀の章!

好きだと思った次の瞬間から仇になるとか、気になるじゃないですか!

しかも古事記をベースにしているなら、佐保彦も悲しい最期があるはずで…。

氷室先生は古代史に並々ならぬこだわりがあったようで、乗った筆が盛り上がり、真秀の章は想定外の長さになったようで…今後の展開が楽しみだったのです…。

少女小説の行方

氷室冴子先生は、吉屋信子などの少女向け小説に憧れ、自らジュニア小説の世界に入り、そして、コバルト文庫で少女小説というジャンルを確立させていきます。が、作品ではなく作家にクローズアップされること。また、一大ブームになった少女小説だけど、他の小説ジャンルの作家より軽んじられることなど、様々な要因で葛藤されていたようです。

ちょっと斜め上な勘ぐりになりますが、少女漫画とか色々誤解されてる部分がある気がするんですよね。ドジだけど可愛い女の子がイケメンに恋をして結ばれる、キラキラ感溢れる世界。だから安直なんだろう、そういうのばかりでつまらない、みたいな。いやいや、それだけじゃないんですけどね…。そういう評価にも違和感を持たれていたようで、それは確かに、と思います。だから…もうちょっと先生が活躍されてたらどうだったのだろうか、とも思います。

コバルト文庫が人気になり、講談社X文庫、角川ビーンズ文庫などなどのレーベルが立ち上がり…ましたが、こういう文化は消費されていき、最近はちょっと残念だなぁと思う事も。

書店にはラノベ作品がたくさん並び、その中には女性向けレーベルも。ただ…うーん、ティーン系が少なくなったような。

BLも市民権を得たように、たくさん並べられ、最近はTLも色々…ただ、かなり過激な…週刊誌よりも刺激的なイラストの入った際どい話、いかにも…な男女のあれこれが描かれているような…。

それが悪いとは言わないですが、まあ、なんていうか、そういうのばかりでない、もっとバラエティに富んだというか…そういう刺激ではない、ワクワクするような刺激というか…が欲しいと思う事があります。
タイトルですべてが語るような…のも。最近のラノベのタイトルの説明っぷりに、いや、なんでそんなに長いの?ていうかこれ見ただけで内容わかるよね?的なツッコミを書店でするような…。まあ、今の時代、そういうのを求めているんだ、って言われたらおしまいですけどね…。