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罪の声~劇場版

生ではなく、ライブビューイングででしたが、初日舞台挨拶の回を鑑賞できました。
鬼滅の刃もいいけれど、この作品ももっと沢山の人に見てほしいな、と思いました。
以下、できるだけネタバレしないようにしますが、どうしてもすべてを隠しての感想は無理なので、ご注意ください。

基本的あらすじは原作通り

塩田さんの原作から、大筋の話は基本同じです。こちらが原作を読んだ時の感想。

昨今原作ありきのドラマや映画が多い中、ぶっちゃけ改悪と言っていい感じの改変があったりして、その魅力を無駄にしてしまう感じが多かったですが、今回はそういった不安がなかったです。
もちろん変わった点、削られた点、逆にオリジナルな点はありましたけれど、それはこの話を更に面白くする要素だったので、逆によかった感じがしました。
この辺りは…さすが野木さんだなあと感じました。
阿久津と俊哉の出会いから、二人で事件を追っていく辺りで、阿久津が記者としての苦悩を話すシーンとか、段々コンビになっていく感じがとてもよかったんですよね…。初めはぎこちない感じだったのに、一緒にいる間にお互いを知っていき、ラストシーンで、スーツのオーダーをしに阿久津がやってくる辺りとか、とても自然な感じでした。

ベテランの力量

今回、複数の証言者として、ベテラン俳優さんが多数出演されています。
阿久津の元上司役の松重豊さんや、俊哉の母役の梶芽衣子さんとか。
わずかな出演なのに、火野正平さんとか…とにかくすごい。
そして、その重厚な演技で物語を動かしていっていました。
個人的には…、母親役の梶芽衣子さんの印象がすごくて。
「鬼平犯科帳」での、謎めいた間者の女性みたいな役が多いので、普通の(?)母親役のイメージがなかったのですが、この役は梶さんだから、な役でした。
ラストの俊哉とのシーンでは、お互いの色んな嵐のような感情が画面いっぱいにあるのに、二人とも淡々と話をしていて…。わずかに俊哉が声を荒げるだけなのに、息がつまり、切なくも悲しい雰囲気となっていて、たまらなかったですね。

あとは…あちこちで見事なうっかりと言われている、橋本じゅんさん。原作でも、まあぺらっと口を滑らせてくれるから、阿久津と俊哉が出会えるのですが、ナチュラルすぎるほどのうっかり(笑)。
そういう調査に素人な俊哉にまでつい話してしまうのは、多分お人よしなんだろうなあ、この人、と思えるほどでした。
橋本さんといえば、夏のドラマMIU404で、星野源さんとは同僚を演じていました。最近でもあちこちのドラマに出演されているのがうれしいです。舞台の俳優さんて、いい役者さんが多いのですが、なかなか知名度が…。

影の主役


「きょうとへむかって・・・・」という子供の声が、宣伝でも印象的ですが。

この子供の声は3人。
ドラマは事件の真相…というより、事件で使われた子供の声が誰か、今はどうしているのか、という方向に展開していくのですが。
一人は俊哉。では残りの二人は一体…。
俊哉が自分のテープを聞かせる代わりに、残りの二人の声について阿久津に調べてもらう事になるのですが。。。
なんていうか…壮絶でした。
まあ、原作どおりなんですが…こう…理不尽というか。
俊哉は本当にたまたまテープを見つけたことでこの事件を知るだけで、それまでは普通に生活していた。だけど、二人はあまりにも悲惨な30年で…。
もう一人の声の主に「あなたはどう生きてきたんですか?」と問われ、絶句する俊哉に、胸が痛くなります。それくらい…。
阿久津にも「曽根さんの人生は自分で気づいてきたものだ。だから、責任とか考えなくていい」といってくれますが、確かにそうなのですが、やっぱり自責の念とうか罪悪感というか…に駆られるのもまた、仕方がないのかもしれません。。。
そういった意味では、この映画の主役は阿久津達ではなく、この罪の声の主たちなのかもしれません。

事件の真相

ギンガ・萬堂事件の真相が徐々にわかり、それが映像にされると、ゾクゾクとしました。
「キツネ目の男」…。あの事件を知っていれば、あの顔は忘れられないものですが。そのキーマンも本当に怖い…。
そして、犯人側の動きを知れば知るほど、なぜこういう事をしたのか…。
複雑な事件は、犯人は儲けが少なく、企業側も金額的な損害はあったものの、とくにものすごい人が亡くなったとかはなく…。
不思議な事件の真相はちょっと理不尽すぎでした。だからこそ、怒りと悲しみが前面に出てくるのですが。

考えさせられることもたくさん

阿久津側から「マスコミはこういう事件を盛り上げて、エンタメ化させるのはどうなのか?」という疑問が生まれます。
阿久津自身、その為に社会部の記者をやめているのですが…まだネットなどのない時代のあの昭和でもこのように煽ることでエンタメ化していて。
更に簡単に情報が入る今、観る側もそのエンタメを更に煽るようになるり…。本当にそれでいいのか。
真実に迫ることと、エンタメとして消化することは違う…だからこそ、マスコミや我々は、知った事をどう消化するのか…。難しい問題ですが、考えさせられます。

テーマ曲もよかった。

最後に流れるこの曲が…また泣かせるのです…。イメージは3人の子供…特に唯一の女の子だった望のイメージなのかなあ…とか。
そういう切なくて悲しい..。

今回あまりにもよくって。実は翌日に2回目の鑑賞をしてきました。もう1回はみたいかも…です。
2時間強の長い映画なのですが、その実感がないくらいあっという間に感じる映画でした…。