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向田邦子の恋文

偶然手にした本が、すごく面白かったり、感動したりすると、テンションがあがります。だから本屋巡りは楽しいのです。だから、最近閉店の話ばかりで寂しいです…。
これは、そんな偶然から見つけた本です。

内容

二部構成になっていて、前半は向田邦子さんから恋人への、または恋人から向田邦子さんへの手紙と、恋人の日記の内容。後半は、著者で向田邦子さんの妹の和子さんの手記となっています。

向田邦子さん

有名な方なので、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、念の為に。
寺内貫太郎一家など、ヒットメーカーの脚本家であり、エッセイストとして有名な方で、台湾の飛行機事故で亡くなられてしまいました。
『父の詫び状』や『眠る杯』など、国語の教科書にも採用されているので、それで読んだ方もいらっしゃるでしょう。
和子さんは、向田邦子さんの妹さんですが、恐らくエッセイの中で、戦時中に疎開させていた妹さんではないですかね。
学童疎開させて、まだ字が書けないから、とお父様が住所の書いたハガキをたくさん持たせて、元気に過ごせたら丸を書いて送るようにと言っていたんですが。初めは大きな丸が段々小さくなり…という、お話の…。ち、違いますかね?

秘密の恋

まあ…文○砲とかで著名人達のスキャンダルが暴かれ、叩かれている昨今…こういう話は逆にアレなんですが…。この向田邦子さんの恋人は、実は妻帯者で…当時はは秘密の恋だったそう。
近しい人は知っていたみたいですが、内緒のこの恋は、誰にも暴かれることなく、秘めやかに続き、終わったようです。
この本も、向田邦子さんの死後、遺品整理の時に見つけたノートを、更に数年後にその恋人の遺族や周りの了解のもとに出版されたようで…。
恋文…といっても、情熱的なものでなく、今、仕事が大変で、とか、体調はどうか、とかの内容で。日記も淡々とラジオなどの感想や、何を購入したか、などの記録のようなもので。
最近、SNSなどに『匂わせ』とかやらかしたり、文○砲なとですっぱ抜かれたり、まあ、本人達の気持ちもゲームとか、軽い気持ちなのか、『道ならぬ恋』があまり美しくないといったら語弊があるか。リスクの高い恋愛に関しての覚悟というか、責任というか、が感じられなく。
いや、覚悟あるなら周りに迷惑かけないように徹底して隠すか、周りから白い目で見られてもいいから貫くか…多分後者は相当の覚悟と精神力がなければ無理ですけど…責任とか色々考えて欲しい話ばかり。
道ならぬ恋は決していいものでは無いし、ちょっと、えーっとは思います。
が。決して手放しでは応援出来ないけれど、静かな情熱を感じる、向田邦子さんの秘めやかな恋はそう感じました。

妹から見た姉の姿

亡くなられた方を酷く言わない、というか、美談としてしまう所はあったりしますが、それを抜いても、妹から見た姉はかなり完璧な人だったのだなぁと思いました。
向田邦子さんも、独りでいた時は分かりませんが、恐らく親や、妹たちの前でも、弱音を吐かない、凛とした女性であったのかもしれません。
だから、遺品整理をしているなかで見つかったもので、改めて向田邦子さんという人間を思い出し、きっとあの時はこうであったのかもしれない、と思い返しているようでした。
自分たちには見せなかったような事も、恋人の前では見せていたのかも…。
また、遺品整理の中で、向田邦子さんと家族との距離感…『父の詫び状』の意味…思い当たる話をつらつらと描いています。
脚本を手がけたドラマ、様々なエッセイから感じたのとは違った向田邦子さんを感じました。
これを読んでから、ご本人の文を読むと、また違った感想を受けるかもしれませんね。

梟書茶房

この本、実は普通の本屋ではなく、梟書茶房さんという、池袋のブックカフェ?で見つけたものです。
この書店さん、なかなか面白い販売方法で、書名や作者の名前は書店のブックカバーで隠してあるのです。そして、選者の推薦文のような紙がついていて、それを読んで選ぶのです。まさにフィーリングで選ぶ。
そのスタイルが好きで、何度か足を運んでます。本はまさに一期一会。書店に行くのは、こういったフィーリングで選ぶ楽しさがあるから、ですね。買うのが決まってる本なら通販でOKですが。
書店でゆったり眺めながら、一期一会の気持ちで本を選ぶのって、とても優雅で有意義な時間かも。
そして、たまにはそんなフィーリングで選ぶというのも良いのではないでしょうか。