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ひまつぶしの殺人

赤川次郎の初期傑作を久々に読み直そうシリーズ…になってますが(笑)。やっぱり早川一家シリーズは面白いです。

早川一家シリーズとは

この「ひまつぶしの殺人」と「やり過ごした殺人」「とりあえずの殺人」の三作…しかまだなかったのが驚き。そうか、人気あるシリーズなんですけど設定が大変ですからね。
赤川次郎の数あるシリーズは、探偵役が刑事と女子大生だったり、泥棒と刑事だったり、三毛猫だったり(!?) と、主役になる人々か個性的ですが、このシリーズは最たるものです。
なにせ、母親役は泥棒グループのボスで長男が殺し屋、長女が詐欺師…で、次男は弁護士、三男は警察官…ですから。
医者を志望としていた次男ですが、ある時家族の本業(?)を偶然知ってしまい、いざ捕まったら、自分が弁護士になって守らなきゃ、と志望を変更します。こう書くと、次男が相当苦労してるように見えますが、…かなりドジっ子気質があり、それが事件を複雑にしたり、解決に結びついたりします。

「ひまつぶしの殺人」のあらすじ

早川一家のとある朝。話題は、中東で石油王になった日本人の話になる。その人物は、近々日本に帰国し、石油で稼いだ金で集めたというダイヤモンドのコレクションを展示するという。嫌な予感がした次男のそれは的中。警察官の弟はその宝石の警備の責任者を任され、母親はその宝石を盗む事をつかんだ。盗みを阻止するため、次男はその展示会場となりホテルに、変装して乗り込む。
ところが。その石油王を殺してくれと、長男は依頼される。初めは断ったが、実はその人物は仮の名前で、本当は彼らの父親を裏切った男が変装しているらしい。早川家の父親は海運業で、海外まで荷物を運ぶ船の船長だったのだが、子供たちが幼いころ、その船が事故を起こし、父親が死亡。ところが、最後まで命をかけて船員を助けたはずの父親が、実は船員を見限り逃げようとしていたと、生き残った船員が証言し、早川一家は非難の的になる。結局裁判で濡れ衣だったことが分かり、社会的地位はとりもどせたが、未亡人となり細腕ひとつで子供たちを育てた母親や自分たちの受けた仕打ちを覚えている長男は、その依頼を受ける事にした。
そして、その金を狙い、長女は石油王を誘惑すべく、仲間と計画し、ホテルに向かう。
こうして、避暑地のホテルに集まってしまった早川一家。そして、次々に怒る殺人と、奇怪な事件。彼らはいかにピンチを乗り越えるのか。

個人的読みどころ

一家の秘密を唯一知る次男の孤軍奮闘と空回りっぷり。とにかく必死なのは分かりますが、1人で頑張ろうとして、おかしな展開になります。ただ、捨てる神あれば拾う神あり。この事件をきっかけに、運命の出会いがあったりします。次作の「やり過ごした殺人」では結婚し、子供が出来てたり…。いや、でも、こういう一家なのに嫁に来てもらうとか、リスク高すぎじゃないのか?と思ったりしますが(笑)。彼女もその秘密を知っても結婚すると思うのだから、肝が据わってるんですよね。
赤川次郎の作品の女性は、犯人だったとしてもヒロインだったとしても「強い」イメージがあります。腕っぷしだけでなく、気持ちも。どちらかというと男性のほうが情けない…。
そして、この作品は、次々に起こる事件がバラバラに見えたはずが、ジグソーパズルのようにはめ込んでいくと、実はひとつの絵になるような、そんな感じの結末で、この時の赤川次郎は本当に凄いです。
そして、意外すぎる結末…、そして、秘密。
持っている文庫の奥付を見ると、初版は昭和59年…だから、発表されたのはその前になるのですが、え、そんな昔の作品なの?と思う位、古臭くないのです。…まあ、出てくるアイテムが時々時代を反映していたりしますが。
そういえば、三毛猫ホームズを含めて、メディア化されている作品は、沢山ありますが…これはなってない…はず。まあ、下手に映像化されてつまらなくなるよりは…。

赤川次郎の他のシリーズ②

幽霊シリーズ

赤川次郎の一番最初のシリーズ。警視庁のアラフォー刑事と女子大生のカップルで事件を解決するシリーズ。この時からコンビが奇抜ですね(笑)。ユーモアミステリとして、読みやすいシリーズです。

大貫刑事シリーズ

色んな作家が、個性的な刑事を使ってますが、大貫刑事はその中でも超個性的。野生のカンというか、偶然の産物か…で事件を解決…まあ、周りが大変だ。

三姉妹探偵団

三姉妹…というか、次女が中心になり、巻き込まれた事件を解決していくシリーズです。…そう言えば最近このシリーズ読んでなかった…。

赤川次郎の作品はユーモアミステリとか、シリアスホラーとか…面白いんですが、やはり…さらっとしていて、内容をわすれていってしまいますね…、いけない、いけない(笑)。