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谷崎潤一郎をめぐる人々と着物

東京の弥生美術館で開催された、企画展に行ってきました。
個人的に谷崎潤一郎は大好きなので、こういう視点で谷崎文学を楽しめるのがとてもよかったです。

企画の内容

副題に「事実も小説も奇なり」とあるように、谷崎潤一郎本人とその周りの人々…妻子や友人などや、彼の小説にまつわる登場人物の着物を、その描写から想像し、コーディネートをしたものを展示していました。

谷崎潤一郎の人生

谷崎潤一郎は大正から昭和にかけて活躍した小説家です。
背徳的でいかがわしい初期の作品は、その蠱惑的な雰囲気から「悪魔主義」と呼ばれています。
個人的には、題材はとても非現実的で、正直そういう考え方っておかしい…と思うような嗜好の登場人物ばかりですが、文体が魅力的でそのおかしい…な箇所に思わず惹かれてしまうようなところが好きです。
痴人の愛では、普通の生活を送れそうな主人公が、今でいう小悪魔のような若い女性に惹かれ、翻弄されていくという話ですが、その小悪魔っぷりがとても…いかがわしい(笑)。
そういった小説の登場人物は、本人であったり、妻や義妹、友人などがモチーフになっているからか、とても生き生きと描かれています。
最初の結婚は、想いを寄せていた女性の妹で、さらにその思いを寄せていた人に似ていた妻の妹を好きになります。
そんな状態から、結婚生活は微妙な感じとなり、それを妻が相談していた谷崎の友人といい仲(ものは言いよう)となった事で、まあ、色々ありました。この辺りは、近代文学史を深堀すると必ず出てくるくらい有名な事件?です。
離婚後、また別の女性に思いを寄せ、すったもんだの末、再婚。
関東大震災を経験後、関西に移住し、京都に根付く日本独特の文化に感化されたような作品を描くようになります。
戦後、海外で翻訳された作品が出版され、何度かノーベル賞の候補にもなりました。残念ながら受賞することはなく、日本人最初の受賞者は川端康成になりましたが。
今回はそんな彼の人生を彩った人々が愛用した着物や愛用品が展示されていました。

魅力的な作品

私がどれくらい谷崎文学が好きかは…以前の記事からでも分かるかと(笑)。

個人的には初めて読んだ「春琴抄」のような作風が好きですが、「鍵」とか「痴人の愛」といった作品も好みです。…と言うと、「え?」といわれそうですが…。
ただ、長編は読んでは挫折してしまうのは、やはり近代文学だから、ですかね。少し時代を感じるような描写があり、古文ほどではないけれど、やはり普段聞きなれない言葉を使われるので、頭で理解するまでに時間がかかってしまいます。
でも、ちゃんと最後まで読みたいんですよね、細雪とか源氏物語とか。

着物や小物が素晴らしい

着物にこだわりのある谷崎なので、小説の中の着物の描写も事細かに描かれています。
時代的にも大正から昭和…はいからさんな時代。
着物自体もですが、帯や半襟、帯どめ、簪や帽子といった小物が展示されていましたが、どれも粋で素敵でした。
また、細雪などの作品の登場人物の着物は、アンティーク着物を取り扱っている方のコレクションから、イメージに近いコーディネートをして展示されていました。
そこには作品の一文が紹介されていたので、その空間で谷崎文学を堪能できます。
とても贅沢な空間でした。

味覚でも谷崎文学を堪能

弥生美術館の敷地内に、「港や」さんというカフェがあります。
こちらでは、企画に合わせたメニューを販売していて、味覚でも企画を楽しむことができたりします。

今回の企画スイーツは「細雪」。
谷崎文学の代表作のタイトルですね。繊細な抹茶ラテがとてもおいしかったです。
この写真を撮っている時、店員さんに、「あら、かわいい(=゚ω゚)ノ」…と言われました。
文ストのぬいを持っていったんですよね。ただ‥‥私肝心の谷崎を持っていないのです(´;ω;`)。
代理のお供は中島敦と太宰治でした…いつか欲しい、谷崎も。