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文豪ナンバーワン決定戦

数年前から、文豪にスポットを当てたコンテンツが増えてきました。そのおかげで、色々な出版社から、文豪作品にスポットが当たっていて、本屋で楽しくなってきました。が、では誰から読めばいいのか。。。となった時、そのコンテンツで気になった文豪の作品を、というのも良いですが、一人で何作も代表作を持つ方もおり、どれを読めば。。。となってしまいます。そんな方は、こういうところからまず決めてはいかがでしょうか、そんな読書案内にぴったりの本です。

様々な観点から文豪を評価する

この本の監修者は、「面白さ」「美文」「思想性」「独自性」「読みやすさ」から文豪を評価し、それぞれのナンバーワン、そして総合でナンバーワンをランキングしています。総合は全50名。あくまで監修した方の独断と偏見なので、「違うわ・・・」と思う事もありますが、私個人としては、おおむねそうだなあ。。。というランキングでした。その個別のランキングをいくつかピックアップしてみます。

まずは面白さ。ナンバーワンは内田百閒。…すいません、私読んだことなくて。。。その評価は「何も事件が起きないのに面白い事」だそうで。。。確かに小説でも漫画でもドラマでも、作品としては、何か事件があれば確かにワクワクして面白いですが、何もないのに面白い。。。ちょっと興味がでてきました。

以降、宮澤賢治、江戸川乱歩、芥川龍之介、太宰治と続きます。確かに面白い作家ばかりですね。個人的には江戸川乱歩が好きですが。

美文ランキングは川端康成。ノーベル賞作家で、「雪国」の冒頭”国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。”が有名ですが。。。確かに美文ですよね。情景が浮かびますもの。

以降は三島由紀夫、泉鏡花、樋口一葉、室生犀星と続きます。確かに。。。三島由紀夫の文章は美しい。。。色々まあ内容がセンセーショナルですけどね。個人的には好きですが。

思想性は小林多喜二。…たしかに。蟹工船などのプロレタリア文学で、そういったメッセージ性が高い作家のイメージがありますね。なので、、、あまり手をつけてないのですが、一度しっかりと読まなくては。

以降は、葉山嘉樹、三島由紀夫、大岡昇平、横光利一が続きました。なるほど。個人的にはここに遠藤周作がはいらないのか?とは思いました。

独自性や読みやすさについは、ぜひお手にとって確認してみてください(笑)

総合一位は個人的に納得

さて、総合は50位までですが、一位は、谷崎 潤一郎でした。個人的に納得。

上のランキングでは上位ベスト5に入ってなかったりするのですが、全体的にバランスよく評価されてました。多分編集の方と、そのあたりは一致するかも。

谷崎潤一郎は、宝塚で「春琴抄」を舞台化したことから興味を持ちました。…よくやったよね、宝塚で。。な内容です。

豪商の娘で、美貌だが目の見えない女性とその側に仕えていた小姓の禁断の愛…といったら、悲劇っぽいですが、まあ、ヒロインの性格がかなりキツい(ものは言いよう←)し、小姓はそのヒロインをある意味溺愛(ものは言いよう その2)するうえに、この二人は。。。だし、ヒロインの性格ゆえのとんでもない事件が発生し、その後の展開も。。。だったで。

まあ、宝塚というオブラートにつつまれたから。。という感じなのかなあ、と思うくらい、美しく昇華された舞台だったのですが、原作を読んで納得しました。

ホントに色々突っ込みたい所が満載の設定、展開なのに、あまりにも美しく描かれていたので、文学として素晴らしいのです。いや、谷崎の力量のすごさを感じます。

そして次に読んだのが「痴人の愛」。。本当になんでこれを手にしたのか(笑)。谷崎のなんというか、個性的な趣味(ものはいいよう その3)と自残的な話が入り交り、独特の耽美的な世界の紡いでいます。

その生涯も、色々調べると面白い方で、文学的にはよい意味で素晴らしいかたなんですけどね。。。でも、その生涯や経験が、谷崎文学を創っていった訳で、普通の人生を歩んでいっただけではよい作品が生まれるわけではなく。。それは谷崎だけでなく、島崎藤村しかり、太宰治しかり。。(女性関係に問題があったかたばかりをチョイスしてしまったのは偶然です、年の為)

谷崎は生きていれば、もしかしたら日本で最初のノーベル文学賞をとっていたかも、とも言われています。ちょうど今(10月)はノーベル賞の発表時期。事いもM上氏がとった取らないで騒いでましたね(笑)。そのM氏のように候補にはあがっていたようですけれど、選ばれる前に亡くなってしまったのが残念です。

今、故・ドナルド・キーン氏の著作を読んでますが、川端康成の受賞の時の専攻者のお一人だったはず。おそらくそろそろその受賞についての資料も公開されるのかな?一定期間経つと教えてくれるとか聞いた事あるような。数年前も、某国営放送で、そのキーン氏がその話をしていましたが、川端か三島か、で推薦する時のやりとりが、まさに日本的な考えかたすぎて笑ってしまいました。でも、もしかしたら、何かがあったら三島だったかも、と思うと、そうだったら川端や三島はその後どうなったのでしょうかね。。お二人とも。。。ね。

お勧め本を紹介

この五つだけでなく、ちょっと面白いランキングもあったり。「恋多き文豪」とか「社会的地位の高い文豪」とか。そんな面白い観点からも文豪をひも解いているので、面白いです。そして、その作家のお勧めを1冊又は2冊を厳選して紹介してくれてますので、きになった作家がいれば、その本から入れるようになっています。

たとえば三島由紀夫なら豊穣の海とか、谷崎は痴人の愛とか。三島由紀夫は色々ランキングされていますが、一番勧められているのは「仮面の告白」でした。うん、納得。

本当に文学は役に立たないものなのか

この本の監修の福田和也さんが「はじめに」の中で、このような問いかけをしていました。この本を製作するにあたり、一貫したテーマがこれのように感じました。数字などで表わされるようなものばかりが全てではない。そういうものでは分からないものも大事なんじゃないか。

紹介されている文豪たちは、個性的で、独特の生き方としています。それがいいのか悪いのか、その評価は分かれるところですが、その生きざまが作品の血肉となっていたりする訳で。

そしてコラムの中にこんな一文が

「目に見えるものばかりが真実ではない。分かりやすい価値ばかりが価値ではない。

それを小説は教えてくれる。」

数字や明確な資料も大事だけれど、目に見えないものも見ようとする。そんな気持ちが大切なんだ、と教えられた気がしました。

今も読まれる作品というのは、そういった見えない価値があるんだとかみしめならこれからは読んていきたいと思います。