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いっぱしの女

最近、氷室冴子先生の再認識が凄くて…ありがたいです。
こうして、再度出版されることで、当時読めなかった作品が読めますから。
そして、自分自身の中でもなるほど…と思わされることも。
この本は20代、30代の女性だけでなく、男性も読んで欲しいかな…。

20年以上前のエッセイ集

このエッセイ集は氷室先生が生前に出版された本で、今回改訂版として再販されました。
つまり、それだけ年月が経っているのですが、内容が…いまだに新鮮なのは、先生の文章が瑞々しいというのもあるのですが…。もしかしたら、世の中あまり変わっていないのでは?と考えてしまいました。

「あなたやっぱり処女なんでしょ?」

氷室先生といえば、少女小説のパイオニアで、当時は「なんて素敵にジャパネスク」や「冬のディーン 夏のナタリー」など、ヒット作をバンバンだしていたころ。
そんな先生がとある出版関連のインタビューを受けていた時、そのインタビュアーの男性からそう尋ねられたそうです。
”セクシャルハラスメント”が世に出てきたころ。なので、まだそこまで浸透していない時代だから…、という事は確かにありますが、かなり失礼な文言です。
今なら過激なフェミニストから抗議をうけるレベルでしょう。
ただ、これはこの男性は全然悪意はなく、さらっと言ったようで。
いや、まあ悪意がなければいいという問題でもないですが。現に言われた先生はこの発言にイラっとしたようです。
少女小説を書くから、夢見がちだから…と。そして、30代で未婚である、からの単純な考え方。
それを理解したとき、ストンと気づいた事。それは、単純な文言から生まれるイメージが、周囲の固定概念を産むこと。
本当にそうなのか、と考えて、「30代の等身大の私」ってどうなんだろうと考えて、このエッセイを書いた、との事で。
10代の私にはよくわからなかった事ですが、今の私のは、それはなんとなく分かった気がします。

あけすけに、さらりと

30代の女性、と括るのはちょっと微妙かなあと思いながらも、似たような経験を持っていれば、そういう事を考えていた、いや、そう思ってるね、と思う事がたくさん散りばめられています。
まあ、結構あけすけに話していらっしゃるので、え?そこまで言っちゃう??と眉を顰めることもあるかもしれません。男女の性ってやつとか。
ただ、女同士の友情とか、親との距離感とか、恋愛感とか…、30代まで独身だった身としては、そういうことあったなあ的に思ってしまう事もあり。まあ、30年生きていれば…。

いっぱしの女

いっぱしの女が思った事を徒然書いていますが、自分もその「いっぱしの女」な年齢になって、身につまされる話ばかりで…。
親、特に同性である母親との関係とか。
30にもなって結婚しないとか…、今でこそ珍しくないですが、やはりそういった年齢になってまで結婚しないことに心配する話とか…。
独身の頃、特に何かを厳しく言われた事は少なく…ないとは言えません…けっこう自由にさせてもらっていましたが。結婚後、何かの話のついで的に言われるのは、「20代で結婚して、子供産んで家で育てる」といったテンプレートで生きていってほしかったみたいな事を言わました。
私はその時軽く驚きましたが、年頃の女の子の親というのは大体そう思うようで…。
小説家としてそれなりのキャリアを持っていても、私の親以上に昭和な考え方をもっていた人の多い時代、それよりも普通の幸せ?を望まれてしまうんですよね…。
そして、男性との考え。恋愛の話も、うん、女ってそうだよね、という共感も。
いっぱしの女になるというのは…難しいです。

20年以上前のエッセイと再度言いたい

冒頭のエピソードのセクハラ問題のほか、女性の社会進出についてなど、本当に今読んでも「これは今でもあるんだよね…」と思う事がしばし。
つまるところ、それは…この20年、そういった問題が解決できていないのではないのか、と考えてしまいます。
女性が社会で働くこと、組織の上に行くこと。中々進んでいない気がします。
もちろん、いささかはマシになったのかもしれませんが。
もちろん、それだけでなく、「クリスマスになぜ男子は10万のアクセサリーを買うのだろうか?」という身もふたもない(笑)話もあったり。いや、そうね…クリスマスになぜ限定なのかしらね、同じ十万ならそれで旅行とか、クリスマス以外でなにか思い出を作るのに使ってもいいのですよ(笑)。
それから、ストーカーまがいの恐ろしいファンの話など…。
今でも面白い、思わせ、考えさせられる1冊です。
いっぱしの女世代の男性も女性も是非に、とオススメします。