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伊藤潤二作品からはじめるホラー漫画入門

ホラー漫画は…お好きですか?

ホラー漫画好きが身近にいないのを寂しく思い、ホラー漫画を「読んだことがない」「ちょっと苦手」と思っている方向けに、 伊藤潤二先生の作品を軸として、その魅力をご紹介させていただきます。

どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

ホラー漫画を薦める理由

ホラー漫画を薦める理由(魅力)は色々ありますが、2つにまとめました。

  • 話が長くなくて読みやすい!
長編・シリーズ作品でも比較的短く、そもそも1話読み切りという作品も多いです。

例えば、楳図かずお先生の「漂流教室」が6巻(文庫版)、水木しげる先生の「ゲゲゲの鬼太郎」も7巻(文庫版)、真倉翔先生・岡野剛先生の「地獄先生ぬ~べ~」は巻数は多い(文庫版で20巻)ものの、1話完結が多いです。

「箸休めで読んだつもりが大きく脱線して戻ってこれない」なんて心配も少ないです。短いですから
  • 各漫画家それぞれの個性が面白い!
御茶漬海苔先生、犬木加奈子先生、日野日出志先生、等々一度見たら忘れないようなインパクトのある絵柄の漫画家さんが多いです。

作風もそれぞれ独特に突き抜けているので、ある種の現代アートでも見たかのような気分にさせてくれます。

伊藤潤二先生について

今回ご紹介するのは『ホラー漫画界の奇才』と呼ばれる漫画家、伊藤潤二先生の作品です。歯科技工士からホラー漫画家に転身するという経歴の持ち主です。

代表作に「富江」「うずまき」「伊藤潤二の猫日記 よん&むー」等を擁し、2019年現在もバリバリ活動されています。Twitterアカウントもお持ちです。

代表作「富江」を含む「伊藤潤二傑作集」「魔の断片」は2018年にアニメ化もされました。

なぜ伊藤潤二作品を入門に?

『純粋に私が好きだから』が大きいですが、理由は4つあります。

  • 発想がずば抜けている
自分と同じ顔をした気球が首を吊ろうと襲ってくる(首吊り気球)、突然少女の口から大きなナメクジが這い出す(なめくじ少女)、天体を食べる天体が現れる(地獄星レミナ)、足の生えた魚や鮫が陸にあがり襲ってくる(ギョ!)等々『何がどうしてこうなった?』という発想の作品が数多くあります。
  • ホラーとギャグは紙一重
ホラーは英語の「Horror」です。この英単語の意味自体が「恐怖」ですし、「絵が暗い」「グロい」「絵や話が怖い」、そんなイメージを持っていませんか?実際そうなのですが、よく見るとシュールなギャグがあちらこちらに隠れています。ホラーとギャグは紙一重なのです。読めば分かります。
  • 放り投げられるストーリーのラスト
ホラーの神髄は『不条理』『非科学的』『超自然的』といった「説明のつかない、あるいは説明のつけようのない何か」と思います。

時折「こ、ここで終わった…!?」という作品があるのですが、逆に理路整然と事象を説明されたところで何だか萎えてしまいますし、その後どうなったかを読者が考えられる余地があり、よりホラーを楽しめると思います。
  • 擬音のセンスが卓越
肉を焼く音が「ジャーン」(富江)、おじいちゃんの笑い声が「オホッホッホッホッ」(双一シリーズ)、等々擬音のセンスが秀逸です。こういったところがシュールな笑いの要因の一つです。(おもしろ擬音集の記事もいつか…)

オススメ作品紹介

  • ファッションモデル
あらすじ:
 大学の映画サークルに所属する主人公。ある日喫茶店で、不気味なモデルが載る雑誌を目にする。サークルで撮影する映画の出演者を一般公募したら、その不気味モデルが応募してきて…。
オススメポイント:
 1話完結です。ファッションモデル「淵さん」の初登場回です。淵さんは冨樫義博先生の「HUNTER×HUNTER」4巻でも「淵!?い、いやヒ…ヒソカ!!」と登場するレベルに見た目も中身もキャラクターが強烈です。ファンが多かった為か、読み切りキャラクターだったのに、別の話にも登場します。
  • 死びとの恋わずらい
あらすじ:
 幼稚園まで住んでいた町に10年ぶりに引っ越してきた中学生の深田龍介。その町では、四辻に立って最初に通った人に占いたい事柄を訪ねて答えてもらう『辻占』が流行っていた。辻占でおかしくなる女性達、龍介が過去にしたこと、そして『四つ辻の美少年』の正体とは。
オススメポイント:
 全4話+余話です。四つ辻の美少年を求め、龍介宅に女性達が押し寄せる様は強烈で、ネット上でもコラージュのネタにされています。「死ぬほど好き~っ」「だったら死ね」からの、え…、えええ~な展開が見ものです。
  • 押切シリーズ
あらすじ:
 些細な諍いで友人を殺害してしまったことをきっかけに、人の首が伸びる幻覚が見えるようになる「首幻想」、自宅の中に突然同級生が姿を現し、フッと消えたことから異次元の存在が浮き彫りになる「押切異談」等、押切トオルを主人公にした全6話からなるシリーズ作品。
 オススメポイント:
 「侵入者」「押切異談」「押切異談・壁」はパラレルワールド=別次元の世界の存在が垣間見える話になっています。「もし違う世界の自分が干渉してきたら」…、作品の世界観が面白いです。
  • 大黒柱悲話
あらすじ:
 自宅を新築し、完成祝いのパーティーを開く家族。しかし父親の姿がない。なぜか助けを求める父親の声が床下から聞こえ、そこに家族が駆け付けると…。
オススメポイント:
 たった4ページの読み切り作品とは思えないインパクト。『どうあがいても、ギャグ回』です。「うぐぐ……話すと長くなる…」ではなくちゃんと説明してください、お父さん。
  • 耐えがたい迷路
あらすじ:
 登校拒否の小夜子と友人の法子が気分転換をしにハイキングに行くが、宗教団体の施設へ迷い込んでしまう。そこで兄を探しに宗教施設に潜入したという少女と出会い、3人で信者たちが入っていった場所へ向かうと…。
オススメポイント:
 1話完結です。閉所恐怖症や視線恐怖症の方は、閲覧要注意!らしいです。確かにラストが「ひえ~」となりました。やはり生きている人間の方が怖いですね。
  • 黒い鳥
あらすじ:
 山でバードウォッチングをしていた久米は、足を怪我して動けなくなっている男性-森口を発見する。森口は1ヶ月も前から遭難していた。なぜ彼は生き延びられたのか、そこには一人の不思議な女性が関与していた。
オススメポイント:
 1話完結です。不思議な女性がキン●ダムの王●将軍に似ている時があるなぁ、と勝手に思っています。SF的な要素もあって、これを読んだときは「そうきたか」と思いました。
  • サイレンの村
あらすじ:
 母からの連絡を受け、京一が久しぶりに帰郷すると、村の様子がおかしくなっていた。「サイレンが鳴る」と怯える幼馴染のサユリ。村には奇妙な塔がそびえ立ち、その塔からサイレンが鳴り響く…。
オススメポイント:
 1話完結です。Play Stationの有名ホラーゲーム「SIREN」に影響を与えた作品です。まさにジャパニーズ・オカルトホラー。

どこで手に入れるといいの?

ホラー漫画あるあるとして、「絶版していて在庫がない」「古本屋にも出回っていない」「雑誌掲載だけで単行本化していない」が挙げられましたが、近年はネット通販やネットフリーマーケット、電子書籍により入手しやすくなりました。

店舗では大型書店やヴィレッジヴァンガードで取り扱っている場合もあるようですが、Amazon等のネット通販が確実と思います。

また電子書籍であれば、1話単位での購入も可能です。「伊藤潤二傑作集」は朝日新聞出版の『ソラノマ+plus』で一部立ち読み可能です。(2019/3現在)

さいごに

オススメ作品では「富江」「うずまき」「双一シリーズ」はあえて外し、7作品に絞りましたが、やっぱり外さない方がよかったか…いややっぱりあの作品も…とまだまだ語り足りません。

そもそも私程度の語彙力では潤二ワールドを表現しきれない、「伊藤潤二傑作集」はとりあえず全部、何なら入手できるものは全部読んでほしい、というところが本音です。

「どうしてこんなことになったのか」「この後どうなったのか」の想像を働かせるもよし、 伊藤潤二作品を切り口にホラー漫画という沼にずぶずぶ入り込むもよし、少し「非日常的」な世界に迷い込んでみませんか?

最後まで読んでいただき有難うございました。

きしししし、ホラーな目にあわせてやるっ!