2019年度新入社員研修の取り組みで、「課題本を読んでインプレを作成」がありました。その優秀作を紹介します。
はじめに
最初に、私は本書のタイトルを見て、亡くなった後までわざわざ失敗を晒されるってかわいそう、と思いました。しかし、この考えこそが「失敗」でした。なぜなら本書は、「失敗から学ぼう!」という趣旨の本だからです。
そして「かわいそう」という同情からは何も生み出されず、自分は成長しないし過去の失敗はただの失敗という事実で終わります。
本書は、偉人たちの功績と失敗、そしてその失敗からの立ち直り方や学べることが書かれています。時に、失敗から立ち直らなくても、そんな状況だからこそ生み出されるものがあることも教えてくれます。
ちなみに、本書で失敗を晒されている偉人は、夏目漱石、ピカソ、アインシュタインなど26名です。
本書の魅力
次に、私が感じた本書の魅力について、3点紹介いたします。
①わかりやすい構成
本書は、各偉人の話ごとに「簡単な紹介→失敗したこと→失敗から学べること」の3本仕立てになっています。また、それぞれの項目が見開きのページごとにまとまっており、直感的にわかりやすいです。
文体も、丁寧でわかりやすいため、サクサク読むことができます。まさに、忙しい人のための教養詰め合わせセットといえます。
②辛辣なコメント
①にて「文体も、丁寧で分かりやすい」と紹介したばかりですが、時々現れる辛辣なコメントが、もとの文体の丁寧さとのコントラストにより魅力があると思います。
まずこれは、目次の文章から見られます。目次には、偉人の名前と、その人の失敗した内容が一言で書かれています。
例えば、「ブルー・ベース:グレる」、「野口英世:調子にのる」などです。後半になるほど適当になってきているようにも見え、最後から2番目の項目では「カーネル・サンダース:いろいろ」で済まされています。
何とも奇抜な紹介の仕方ではあると思いましたが、それによりとても興味がひかれました。
また、本文中にもその辛辣さは登場します。ドストエフスキーを「人間のクズ」呼ばわりしたり(p.112)、地球の失敗を「人間という天敵を生み出したことかもしれない」(p.145)と書いたりしています。
ほかにもところどころ、このような文章があり、筆者の心の奥を推し量らざるを得ません。
③コラム
本書には、偉人たちの紹介のほかにちょっとしたコラムがあります。そこでは、多くの人が経験しがちな失敗例とその原因や対策など紹介されています。
特にコンプレックスから引き起こされる失敗とその悩みに対する筆者の回答が印象的でした。
なんと、
「べつに、いいんじゃね? (p.116) 」
という一言で終わっていました。
もう少し詳しい解説は次のページに書かれていましたが、疑わしく思う方はぜひp.116をご覧ください。
さいごに
本書は、失敗を恐れがちな人に強くおすすめします。
どんな人でも失敗はします。しかし、その失敗からどう立ち直るか、どう活かすかが何より大事です。そのどうするか、という部分に対するヒントが本書にはあると思います。
そして失敗を恐れなくていい、もっと挑戦しよう、という勇気をくれます。
また、本書で紹介されているのは有名な方ばかりなので、博識な方にとっては今更読む価値がないと思われるかもしれません。しかし、そのような方も含めて多くの人にぜひ読んでいただきたい偉人がいます。
それは、最後に紹介されている「両親(保護者)」です。
では、両親の失敗は何だったのでしょうか。実際に読んだ私は、「それ」を失敗という表現が適切かはわかりませんでしたが、日々家庭の中で「失敗」と感じることがあれば、「それ」が根本にあるのかもしれません。
しかし、私たちが今日まで生きてこられたのも、「それ」のおかげでしょう。本書を読むことで、自分と両親、もしくは自分と子供について振り返る良いきっかけになると思います。
最後に、筆者の言葉を一部引用させていただきます。
「本をたくさん読んでおけば、人生、どうにかなる。本を読み、チャレンジして、失敗する。これが人生を楽しくするコツ。(p.175)」
逆に言うと、人生を楽しくするために、読書は必要。
その読書の候補にぜひこの『失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!』を入れてみてはいかがでしょうか。