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嚙み合わない会話と、ある過去について

有名な作家さんでも、タイミングなどによって読んでいなかったりします。この本の作者、辻村深月さんもそんな作家さんのおひとりでした。
いや、気になって購入していた本が数冊あったのですが、ね…。積ん読がなかなか減りません…。

短編集

この本は、タイトルそのままの内容の短編が数作品集まった短編集です。
一体どんな話なのか、ちょっと分かりずらそうです。が、最後まで読むと、確かにそういうタイトルになるよね、と理解できます。
一言で言ったら、『この世で一番怖いのは人』という事を教えられる短編があつまってます、といった感じです。
全部で4編ありますが、ざっとあらすじを。

『ナベちゃんのヨメ』

大学時代の友人であるナベちゃんが結婚する、という知らせが。おめでたい話だが、その結婚相手である嫁がおかしいという話が持ち上がる。サークル仲間で、男女が混じる仲間なので、誰かが結婚式をすれば呼ばれる。今回も同じように招待はされたが、女子たちは彼女の友人という体裁で参加してほしい、とお願いされたのだ。そんな奇妙なお願いをしてくる花嫁を主人公たちは怪しむ。そして、大学時代のうわさや、その後のエスカレートしていく要求に困惑さが増していき…。

『パッとしない子』

小学校の教師をしている主人公のかつての教え子がアイドルになり、人気となっていた。ただ、彼女の中で、その子はアイドルになりとか、ましてや人気になるといった印象はない。いわゆるパッとしない子だった。実際は直接に指導したのは彼の弟だったが。その弟も印象が薄かった。ただ、かつて体育祭での入場門の製作でとても素晴らしいものを作っていた記憶があった。それくらいの記憶だが、仲間うちや娘からうらやましがられてはいた。そんなある日、その彼を追うテレビ番組の企画で、かつて通っていた小学校に来るという話が持ち上がった。学校側は快諾。そして、その番組の収録日になり…。

『ママ、はは』

友人の引っ越しの手伝いのしていると、その友人の母親から電話がかかってくる。電話にこたえる友人の荷物を確認していると、友人の成人式の写真を見つける。電話が終わった友人にそれを見せると、友人も懐かしそうに眺めていた。そして、その写真で着ている着物と自身の母親の不思議な話を教えてくれる。

『早穂とゆかり』

タウン誌の編集者となった早穂は、かつてのクラスメートで、今では経営している塾が成功し、教育者として時の人となっているゆかりの取材をする事に。ただ、早穂の中のゆかりと今の姿がなかなか一致しない。合う事が無くなってから今までに、一体何があったのか。興味深く思った早穂はゆかりにインタビューすることに。なぜ塾を経営することになったのか、など読者の気になることを聞いてみるが…。

オチが意外な展開で

4つの作品ですが、あらすじは冒頭部分のみです。いわゆるきっかけ部分のみです。短編集なので、さほど長い話なのですが、最後まで濃ゆい話で、展開も思ったものと違う方向にいくので、びっくりします。え?そういう事?みたいな。
なので、最後のオチまで一気に気になる展開になってます。
ただ、…まあすっきりはしなかったです。考えさせらる話ですが。
いい意味でもやっとします。ええ、いい意味で、ですよ。
内容が矛盾する、とか展開に無理がある、といったものはないです。ただ、読後に爽やかさ?を求める人にはオススメできないかなあと思いました。

この世で一番怖いのは人

人の記憶は曖昧になるし、自分に都合の悪いことは忘れがちです。
また、「自分のした事」は忘れがちですが、「人にされた事」はなかなか忘れません。さらにそれがあまり良くないことは更に。
特に『パッとしない子』や『早穂とゆかり』は、それが顕著でした。
にしても…、いやまあその『された側』がちょっと粘着質だなあとあは思いました。ずっと影みたいなものを背負っていたのか、とは思いました。それが力になった、といえばいいんですけど、ね…。

辻村深月さん

本当に、いままで読めなかったのが不思議です。いや、気になっていたのですが、なかなかチャンスが…。
とても読みやすく、次の展開がとても気になる文章が素敵な作家さんですね。
ただ…気持ちが沈んでいる時にはちょっと向かないかなあとは思いました。この作品だけかしら。
なので、他の作品も色々読んでみたいと思います。…人気作家さんですからね…沢山ありますね(笑)。
そして、多分…まだ積ん読の中にも…。