中央システム株式会社

推し、燃ゆ

推しが炎上した。ファンを殴ったらしい。
芥川賞受賞と本屋大賞ノミネートで話題になった本ですが、内容も何かと衝撃的でした。

あらすじ。

主人公は女子高生。推しているアイドルがいる。その推しがファンを殴ったらしい。そのスクープか報じられてから、主人公のようにそれでも推していく子もいれば、離れていく子もいる。そして、グループ自体もそしてその中でも推しの人気が凋落していく。そんな推しをそれでも応援するが、輝きを失っていく。それに呼応するかのように、主人公の生活も荒んでいく。そして、そんな彼女に更に衝撃的なニュースが飛び込んでくるのだった。

そこまで入れ込むのか

私も2次だの3次だの2.5次だのに、推しがいます。なので、最初のスクープでショックを受けるのはわかります。が、しかし主人公の入れ込みかたはちょっと驚くくらいで、え、そこまで?みたいな感じでした。

コンサートや雑誌などのコメントから気持ちを解釈する

まあ、ファンなら大体やってる事だし、言動から推し量るというのは日常でもあること。
主人公はその解釈をブログにしたため、気持ちを代弁してみせます。が。炎上事件以降、推しのアイドルはテンプレ通りの凋落っぷりをみせるのです。その辺、かなりリアリティあるというか…。
実際は熱愛とかが多いですが、イメージがマイナスになると、『あばたもえくぼ』がなくなり、『可愛さ余って憎さ百倍』に切り替わるスピードの速さ…。
なので、主人公達が『そうに決まってる。だからスキャンダルは間違いだ』『彼は悲しんでる』といった事を書いても、一度マイナスになったものは取り戻せず…。
しかし、推しについては僅かなコメントから色々推し量るのに、自分の身近な人の言動からはその気持ちを推し量ろうとはしないのは、一体何故なのか…。

生活に支障をきたす

推しをなんとかしなくては。その気持ちが強くて、それが原因で生活に支障をきたしていきます。主人公の荒んでいく様は、いや、いやいやいや?と読んでいて困惑するレベルです。ちょっと軽く引きました、ホントに。
そういう生活をすれば、周りも心配するのですが、一途…というにしては異様な姿にどんどん離れていく感じで…。フィクションとはいえ、推し活も程々にしなくては、と思いました…

結局相手も人の子

そんな病的に推していたアイドルも、人気の凋落のあとはテンプレ通りに、グループ内の不仲話から。結局は解散、そして、輪をかけた実は付き合っている人がいて、芸能界を引退、結婚を表明します。…ちょっと酷いなぁ、このアイドル。それでも最後まで推していく主人公…。健気ですねぇ(棒)。ただ、ラストシーンは、主人公にかなり同情できます。ううむ、まあ、相手も人の子ですけどね。

本来の推し活は素晴らしいもの

小説を読み切ると、推しがいるのは恐ろしいものだ、と思われそうですが…そんな事はないです。ぶっちゃけ推しがあるというのは生活に潤いをもたらすものです(力説)。
推しというと、人のイメージありそうですが、別になんでもいいのですよ。動物でも機械でも。
好きな物、見ているだけで、考えているだけで幸せになる存在は、特にこんな状況では必要だと思います。
が、思いすぎて過剰に突き詰めて…になって、生活や体調なに反映されてしまうのは、もう推しではないんじゃないのかなぁと思いました。

話題作

全体的に読みやすい文章でした。めちゃくちゃドラマチックな訳ではないけれど、読ませる展開で。
ただ、主人公に共感できなけれは、キツいかなぁと思います。
確かに、アイドルを推すのは良いんですが、炎上後の彼の様子を見ると、ヒロインがここまで追い詰める程の価値があるか、といえばぶっちゃけない、んですよね。
推し=疑似恋愛相手…に考えるなら、そういう相手を忘れて、勝手に落ちていく身勝手さを感じます。
また、そういういれこみをするような環境になるのは、ヒロインの家族との関係もあるのですが…傾倒していくヒロインを見て、不可思議に思う家族からみたら、ヒロインの状況が異常に見えます。
主人公視点からの文章のはずなのに、そうやって多角的に見られるのは、この作品の面白いところであり、怖さでもあるかなぁと感じました。

最近、某アイドル事務所の退所だの解散だのスキャンダルだのが騒がしいですが…そんなファンはこの作品を読んで、共感するか、批判するか、気になるところであります。