中央システム株式会社

元彼の遺言状

最近はエッセイなどのほうが面白くて、そちらばかり読んでいましたが、久々に面白いミステリーを見つけました。

あらすじ

主人公の剣持麗子は敏腕弁護士として活躍している。付き合っていた彼氏からプロポーズされたが、婚約指輪が小さいのが不満で断ってしまう。
その上ボーナスが少ないと弁護士事務所のボスに不満をぶつけ、出ていく事に。
むしゃくしゃしている時、元カレの森川英治から連絡が。元カレは若くして亡くなった。だが、奇妙な遺言をのこしていた。「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」と。
知人から依頼で、その遺言の犯人に仕立て上げる。そして、数百億と言われる遺産を手にしようと画策する、が。
遺言書の入った金庫が盗まれ、英治の顧問弁護士が殺害されるという事件が発生する。
遺言の真意とは一体何か。そして、英治や弁護士を殺害した犯人とは…。

斬新なミステリー

ミステリー好きで、色々な本を読んでいますが、この本はちょっと意外な設定が沢山あります。

犯人を仕立てる

事の起こりは、元彼からの奇妙な遺言状を受け取った事から。「自分を殺した人間に遺産を譲る」というもの。
「もしかしたら、自分がインフルエンザをうつしたからかも?」なんていう知人のあやふやな話から、時には論理だて、またある時には強引なんじゃないか?というこじつけもしながら、依頼人を犯人に仕立てあげていきます。
亡くなった死因も病死…ともいえず。なので、でっち上げだろうが若干つじつまが合わなくても、判定する遺族が納得すればいい。
…いままでそんな話を聞いたことないなあと思いました(笑)。

お金が一番なヒロイン

弁護士だし、家もそれなり…で、特段お金がない生活をしているわけではないけれど、お金になる事が大事な主人公…。
そもそもの話のきっかけも、プロポーズ用に用意された指輪のダイヤが小さいと断ったところからだし…。
犯人を仕立て上げる事をしているのも、その遺産から報酬をもらうため。
お金=自分の価値という考えのようですが、ミステリーの探偵役にもなる主人公にしては、ちょっと意外な設定かもしれませんね。
麗子の家もちょっと複雑ではあるので、こういう性格になったもの、ちょっとは仕方ないのかも…。
まあ、それもちょっと意外な展開で誤解も解けますが(笑)。
そういえば、主人公の家庭環境とか、親子・兄弟関係も物語のキーになってきたりしてますので、作品の設定に無駄がなくて、舌を巻きました。

謎を呼ぶ遺言

そもそものきっかけとなった英治の遺言、「犯人は自分を殺した人に」という、謎のものですが。が、周囲がそれに翻弄されていく様子が可笑しい。
いや、主人公だけでなく、やはりどんな立場の人間でもお金を貰えれば嬉しいものではありますが…。
遺言は他にも、持っていた別荘地を元彼女に、というのもあり。主人公はこちらでも対象だったりしますが。
なので、そちらでも、この謎の相続に巻き込まれていく羽目になります。
遺言を書いた英治の本意は、衝撃のラストで明らかになります。

続編も楽しみ

実は「倒産続きの彼女」という続編も刊行されています。主人公は、この元彼の遺言状の主人公、ではなく、その事務所の所員のようですね。もちろん彼女も出ますが。
まだ、こちらは購入していないので、これから読むのが楽しみです。