中央システム株式会社

京都寺町三条のホームズ

そうだ、京都に行こう。
ベタですが、そんな気分にさせてくれるお話でした。

あらすじ

ヒロインの真城葵は、三条にある「雅」という店を訪れる。祖父の持つ骨董を売りに来たのだが、その持ってきた品と彼女が高校生だという事で、店主たちに一旦止められる。
彼女がなぜそんな事をしたのか…。
元々埼玉に住んでいた葵だが、家族の事情で京都に移り住むことになった。その時付き合っていた彼氏がいたのだが、遠距離恋愛することになる。が、引っ越しして数か月後、いきなり別れを切り出される。彼は別に好きになった人ができたというのだ。しかも、その好きな人というのが、彼女の親友だというのだ。
その話は本当なのか。裏切られた気持ちになった葵は、確かめ為に埼玉まで行こうとするその旅費にしようと、骨董を売りにきたのだった。
葵の祖父の骨董コレクションからもってきた品は、店主たちも唸らせる逸品で、コレクションの中からよさそうだと選んだもの、そして、店に入ってきたときに、店の品を見たときの感想から、葵が骨董の審美眼の才能があることに気づいた店主の息子が、品物を買い取る代わりに、旅費を貯める為にここで働くことを提案する。
その案に迷いながらも葵は雅でアルバイトをすることに。そして、アルバイトを通じて様々な出来事に遭遇する。

ミステリー…?

一応カテゴリーとしては推理…なんでしょうかね。
店主の息子…家頭清貴は、ホームズとあだ名されているし、彼の洞察力はかなりのものです。名字からついたあだ名(家=ホーム、頭=ず)だったりしたのですが、周りは彼の推理力にも一目置いていたりします。
ただ、誰かが殺害されて犯人を捜す、とか、強盗とかの犯罪があるわけではないのです。
ただ、日常のチョットした出来事で迷う人達に真実を導く事になる…、みたいな展開なのです。
そして、その出来事が京都の街並みと、そして京都を彩る風景を背景に描かれていくのです。ああ、京都に行きたい…。
ちょっと簡単にあらすじを。ちなみにほんのタイトルはもっと素敵なのですが、

春の仁和寺と京焼茶碗の話

店からの依頼で、仁和寺のお坊さんから知り合いに会ってほしいと依頼される。桜咲く仁和寺にいたのは、父親から遺品として仁清の茶碗を受け継いだ男性だった。男性はその茶碗を父親が譲った真意を知りたいという。
京都といえば桜。桜といえば仁和寺…。御室桜…。一度は行ってみたいものです。

葵祭と斎王代の話

雅のオーナー、ホームズの祖父が葵祭の斎王代に選ばれた女性の親から、斎王代を辞退しろ、という強迫状が来たことを聞く。脅迫状を送ったのはだれか、そして、その真意とは…。
新緑の頃に行われる京都三大祭の一つ、葵祭。下鴨神社に神の使いとして派遣される斎王代。もともと斎王は内親王が伊勢神宮で神事を行うために遣わされる巫女さまです。今は大分形式が変わり、毎年斎王代として、年頃の女性が選ばれています。…とちょっと勉強になりました。へえ、斎王代になったらお金もかかるんだ、とか。

百万遍知恩院と家頭家の事情の話

ホームズの父親は店主でもあるけれど、作家でもあるのですが、葵はその本のドロドロとした話と、穏やかな店主の姿が一致しないのが不思議で、つい尋ねてみると、店主は意外な話をしてくれる。そして、ホームズと二人、知恩院で行われる市に向かう…。才能って、生まれながら持っているものかもしれないけれど、努力も必要なんですよね…。

初夏の鞍馬と掛け軸の話

店主の作家仲間が亡くなり、その遺族からとある依頼がくる。前作で二人は緑の紅葉を見に鞍馬に行こうと話していたことから、ついでに、とその依頼を受ける。亡くなったその家の主は、三人の息子にそれぞれ掛け軸を一幅ずつ譲ると遺言する。だがその遺言により掛け軸を譲られた翌日、何者かにより燃やされてしまう。燃やした犯人はだれなのか。そして、その理由は…。そして、掛け軸に込められた意味とは…。
夏の鞍馬といえば、川床。店主が予約してくれたお店で、美しい風景を見ながら鱧料理…う、うらやましい。

祇園祭と過去の恋の話

葵のように、ホームズにも苦い恋の話があった。祇園祭の数日前、その苦い恋の相手が不意に現れた。彼女は結婚間近であったが、その結婚に迷ううちに、彼の事を思い出し、やってきたのだ。忘れられないと…。
一方葵も、埼玉の友人たちが研修で京都にやってくるという。もちろんその中にも元彼と親友「だった」彼女も。埼玉に行く為にバイトをしていたのだが、最近は行くべきか迷っていたところだった。
夏の京都といえば、コンチキチン。祇園祭ですね。
お店では数日前からお店に出るときは浴衣で、となっているようで、葵ももちろん浴衣に。雅ですねえ。

続編が気になる

5話目で葵の恋も一つの結末を迎えます。まあ…高校生ですからね…。ちょっとこの子達ねえ…とは思いましたけど。
葵が以前の恋に決着をつけられたのは、新たにちょっと気になる人ができたわけで。まあ、ほら…そこはベタですけど(笑)。
ただ、ひとくせある、やさしいけどイケず(笑)なホームズさんと一体どうなるのか。ちょっと気になったりします。
何冊か続編がでているようなので、続きも読んでみたいと思います。
…積ん読をまずは減らさなきゃですが。