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死者の学園祭

本棚の整理をしなきゃ、と思いながら眺めていたら、懐かしい本を発見。つい読んでしまいました。やっぱりこの時代の赤川次郎はすごい、と思いました…。これが長編デビュー作ですって。
こんな展開のミステリーはなかなかないですよ…。

あらすじ

確かに色々と時代を感じる設定ですが、トリックや結末は今でも鮮やかで新鮮だなあと思いました。

衝撃的なプロローグ

父親の転勤により、大阪から東京へ転校することになった真知子。感慨深く学校を去ろうとした。すると、上から自分を呼ぶ声が。振り返ると、4階のベランダの手すりの”上”に立っている友人を発見した。慌てた真知子は慌てて降りるように言った。が、友人はそれにうなずくと、教室側ではなく、外に向かって降りたのだ…。警察は状況と目撃者の真知子の説明から、友人は自殺と判断されてしまった。だが、友人の様子に、真知子は自殺以外の理由を感じていた。けれど、両親に促されるままに、そのまま転校していったのだった。

怒涛の事件発生

転校先は父の知り合いが校長をつとめ、父自身も理事を務める手塚学園だった。転校先クラスには、ウマの合う友人がすぐにできた。また、宿題の代筆などを有料でしてくれる、というようなユニークなクラスメイトもいた。
だが、転校早々、クラスメイトの一人が交通事故で亡くなるといった事件が起きる。
いきなりクラスメイトの葬儀に参列することなった真知子。だが、その葬儀で刑事と思しき人物を見つけてしまう。そしてこっそりと様子を伺って、その人と遺族の会話を聞いてしまう。これはただのひき逃げでなく、明らかに殺意を持って轢いていると…。
そして、ざわつくクラスが落ち着く間もなく、また、事件が発生する。クラスメイトの一人が学園の講堂で、固定されていた照明が頭部に落下し亡くなってしまったのだ。
完全に固定されていた照明が落ちたのはなぜか。
照明を調べる為に現場に行った真知子は、そこでクラス担任が立っているのに気が付く。思いつめたその姿を、隠れてみていた亜由美は、それを不思議に思ったのだった。

狙われた理由?

実は亡くなった二人にはもう一人、友人がいた。その友人に今まで怪しいことは無かったか、と尋ねる。と、最初の事故の数日前、気になることがあったと答えた。3人にはあまりすきではない先生がいた。ある日、その先生が視聴覚室にお気に入りのアイドルのビデオを隠しているらしいとの噂を聞いた。3人はそれを確認するために、視聴覚室に行った。そして、目的のビデオを発見し、いたずらを画策していた時、それとは別にラベルの貼られていないビデオを発見する。中身を確認してみたが、絵画や宝石の静止画ばかり映されていた。そして、そんなことをしている事を見つかり、注意された三人はそのまま視聴覚室を後にするのだった。
そんな話をしているうちに、何かに気づいたらしい友人は、だが、その気づいた事を真知子に話す前に、何者かによって殺害されてしまう。

出会いと意外な展開

次々にクラスメイトが殺害され、ざわつく学校は、早めの夏休みに入り、生徒たちを落ち着かせようとする。そんな事件の最中、真知子はひょんな事から神山英人という大学生と出会う。大阪出身で、色々な話をしているうちに親公認で付き合う事になった二人。事件に首を突っ込む真知子を英人は心配しつつ、英人も解決に向けて協力する。
そんなある日、この事件の発端である視聴覚室に糸口があると考え着いた真知子は、帰郷して不在の英人を置いて、調べに行こうとする。学校が開いていて、かつ視聴覚室が手薄になるのは、理事会の日。そう判断した真知子だが、転寝してしまい、思ったより遅い時間に調べにいく事になってしまった。
そして、学園に侵入し、視聴覚室に向かおうとすると、とある教室の灯りがついていることに気づく。こっそりと確認すると、そこでは数人の人物がビデオの静止画を見ながら何かをしていた。一体なにか、と更に確認しようとした真知子だったが、何者かに薬をかがされ、気を失ってしまった。そして、目が覚めると、なぜか自分の部屋にいたのだった。
真知子の見たものは夢だったのか。真知子が混乱する中、学園は再開したのだったが、そこにはクラス担任の姿はなかったのだった。

事件の犯人

そんなある日、両親と英人と食事に出かけている時、真知子が襲われる事件が発生する。命に別条はなかったが、検査の為に入院することに。しかし、犯人は真知子を執拗に狙い、入院中の真知子を襲う。その犯人は3人の生徒を殺害した、学園の美術教師だったのだ。
そして、真知子を護るために病院に詰めていた警官に犯人が射殺された事により、事件は解決したように見えた。

学園祭


2学期になり、学園祭に向け、生徒たちが活気づくなか、演劇部から真知子たちに依頼がくる。それは、この事件について劇化したい、というものだった。だが、自分のクラスメイトが被害者であり、犯人まで学園関係者である事に躊躇いがある。とはいえ、たしかに身近にあったセンシティブな事件を取り扱いたい気持ちも分かる。すると、英人が事件の脚本をかってでてくれた。
以降、英人は演劇部につきっきりになり、真知子は不満があった。しかも、一部まだ未解決な事もあり、その辺りをどうするのか、など聞きたい事はあったが、英人は真知子にすら内緒で。ただ、タイトルだけは教えてくれた。
…「死者の学園祭」だと。

最初から最後まで驚きの展開

冒頭から友人が…という衝撃の始まりですが。とはいっても、この事件は真知子の中にずっとあるとはいえ、この展開の何につながっていくのか…。「本当の」事件解決で、なぜそんな悲劇が起きたのかが解決されます。
また、終盤で真知子が襲われ、そこで殺人の犯人は解決し、物語はそれで終わりかと思われました。けれど、そこから学園祭での演劇という意外な展開から、「本当の」事件解決に至るという、展開に次ぐ展開が目まぐるしい。
事件が発生しました、それを解決しました、が2段仕込みになっている…。
ただ、主人公の真知子が探偵として活躍(?)しているのですが。まあ、展開的に狂言回しになっているのが、ちょっとかわいそうな気がしました。この始まりでこの終わり、という見事な展開なのですけどね。ただ、その為に、命がけで頑張った真知子がちょっと…。まあ、イケメンで優秀な英人という恋人ができたたからいいか(笑)。

メディアミックス

赤川次郎の作品といえば、セーラー服と機関銃のようにメディアミックス化されています。
勿論この作品も映画化されています。たしか、2000年に深田恭子さん主演で。と、いっても、私はこの映画をみそこねていますが…。
個人的には映画よりコミックのほうがイメージが強いです。というか、赤川次郎作品を初めて知ったのはコミック化されたものでした。当時「なかよし」で松本洋子さんが赤川次郎作品をコミック化していました。
設定等は少々異なり、主人公の名前も変わっていましたが、大筋の話は変っていません。
まあ、あの結末だと…当時の少女漫画的には厳しかったのかなあ…とか思ってました。が、それより更に衝撃的な展開かつ結末の「殺人よ、こんにちわ」をそのままコミカライズしてましたね…。こちらの作品も名作ですが。
ただ、かなり昔の作品なので、見つけるのは大変です。が、小説もコミックもそれぞれ良い作品ですので、是非に。もしかしたら、最近電子化もあるので、そこにあるかも?です。