中央システム株式会社

小林一三~天才実業家と言われた男

タイトルを見ると伝記ものっぽいですが、どちらかというと名言集のような本で、なるほど、とおもわされる本でした。
実業家とか経営者…にはなるつもりは多分ありませんが、社会人として考えさせられるような話が沢山ありました。

小林一三って?

ネットで検索すれば出てきますが、一応ざっくりと。
一言でいったら、阪急東宝グループを作った人です。
今は…松岡修造氏の曽祖父というほうが有名になってますが(笑)、関西どころか関東にも影響を及ぼす凄い実業家でした。
個人的には、宝塚歌劇団を作った人のイメージ。だから松岡修造氏のお嬢さんが音楽学校に合格した時は大騒ぎになったのです。
阪急電鉄を作り、沿線の街作りを行い、娯楽施設などを作り…今の日本にもかなり影響力を与えている方です。
…と書くと、凄く偉そうな感じですが、この本からは、かなり人間くさく、面白い人物だったようで。
若いサラリーマンだった頃は冴えない感じで、箸にも棒にもかからないような人物像だったようです。ちょっと意外…。
でも、そんな微妙なサラリーマン時代に培った人脈や訪れたチャンスをモノにして、一流の経営者になったのだから、人間万事塞翁が馬、ですね。

小林一三の言葉

この本は、そんな小林一三が色々な場面において発言した有名な言葉について、なぜそう言ったのか、どういう背景にあったのか、が書かれています。
その中で、いくつかを紹介します。

事業成功の秘訣

後に東急の時期を手がける五島氏に対し、その秘訣として、次の五つを述べたそうです。

⚫事業は大衆を相手にした事業でなくては成功しない
⚫つねに事業は一年(一歩)先を目標に計画を立てよ。百年(百歩)先を見る人は狂人にされてしまう
⚫電鉄を敷いてもそのまま放置しておいては、沿線は発展しない
⚫鉄道沿線の居住者が、その沿線に住むことを、一つの誇りと考えるように電鉄経営をなすべし
⚫人間はつねに貸し方にまわれ

電鉄経営についての話ですが、実際に社会人として仕事をする時、自分の仕事に置き換えることが出来るかなぁと思いました。

それが悲哀の…

「それが悲哀の失恋であろうと、入社試験の悔しい失敗であろうと、その人にとって貴重な経験であることに変わりはない。
いつかはそれらの経験を活かしてこそ、次の大きな経験と飛躍が得られる」

確かに。小さな経験で、くだらない事でもそれが自分の経験として積み上がるもの、なんですよね…。実はそれが後で大事な事に繋がったり…。

バカでは困るが…

「バカでは困るが、利口すぎてもいけない。利口なのが利口ぶっているのは、たいしたことではない。バカが利口ぶるのは始末がわるい。
何よりもこわいのは、利口なのにバカぶっている……こういう手合だよ」

…深い(笑)。師と仰いだ、銀行時代の上司を見て感じたのだそうで。馬鹿ぶってるはアレですが、普通の顔して優秀な人か凄いのは分かる気がします。

会社が危機に面する時

タテの階級闘争のほかに、ヨコの微妙な同列闘争がある

会社だけでなく、チームでもなんでもそこに闘争があれば、組織は崩れやすいかなぁとは思います。人間関係がギスギスしていたら、生産性も効率も悪くなり、ピンチになる、事はあります。ライバルとして、よい緊張なら成長させるものですけど、ね。

新事業の…

「新事業の準備が充分にととのったら即突進すべし。
一、二、三ではいけない。二は迷いである、自信のなさである」

自分の、名前が一三だから…と本には書かれてました(笑)。でも、決めたら即行動…というすばやさは何事にも大切だと思いますね。

ちょっぴり豪華…

「ちょっぴり豪華……これら微妙ないささかの差が大衆の虚栄心をくすぐる。満足させる。幸福感をおぼえさせる。」

確かにささやかな幸せ、とかプチ贅沢というのは、罪悪感もなく、ちょっと幸せを感じるか…なんて思ったりします(笑)。

何もそこまで…

「何もそこまで無理することはないではないか。
過ぎたるは及ばざるがごとし。
何もしないのか、結果的には最善を尽くしたことになる場合もある。」

電鉄を通し、そこに人を集める為に色々試行錯誤しすぎて、逆におかしくなった、らしいです。せっかくの景観を損ねたり、魅力が無くなってしまったり…逆に何もしない、という判断も、大事なんだそうです。

計画性のない仕事には限界がある

「大きくなる人、どこまでも発展する人、行きどまる一つ、縮こまる人、その運命は断じて偶然ではない。」

み、耳が痛い(笑)。計画性…無駄のない計画性…難しいですね。でも、仕事が出来るひと、というのはだいたい計画を上手に立てて、効率よく仕事をしています。…見習わなくては。

自分の力だけで…

「自分の力だけでやれるものに全力を注ぐ、独立不恥影(かげにはじず)(品行方正で、心にすこしもやましいところがないこと)……それよりほかに手はない」

あれもこれも、ではなく、自分の力を見極め、全力で取り組む…難しいですね。

「ライバル関係でいてこそ、お互いにそれぞれに発展していく。」

電鉄にも野球にも、ライバルがいたからこそ今の立場がある、と前述の五島氏が無理な買収などをしているのを知り、諌めるように言ったそうです。
ただ、この言葉に反発したように更に無茶をして、色々大変だったようですが…。

この本で学ぶべき事

いち経営者として、電鉄、映画、演劇、百貨店事業を手がけ、後に東急や西武といった日本を代表するグループ会社のお手本となった人物。読んだ人事に色々感じる事は異なると思います。
が。成功した話だけでなく、失敗した話もあったりするので、色々な事を学べるかと思います。

そういえば

阪急電鉄創設時、最大のライバルは阪神電車だったそうで。煮え湯を飲まされたりしながら、追いつき追い越せの気迫で対抗していたようです。
が。
今はその阪急の傘下にいる阪神…。歴史の妙ですね…。
また、阪神といえば、傘下に阪神タイガースがありますが、トラキチの旦那曰く、この合併の時、球団は阪神電車傘下のまま、にしたそうで。
…まあ、確かに結局阪急はブレーブスを手放してしまいましたからね…。オリックスに売却後、イチローが入団したという皮肉な…(笑)。
ちなみに、あまりに採算がとれず、阪急ブレーブスはドラ息子、宝塚歌劇団は不良娘とよばれていたそうな。
ドラ息子は手放してしまいましたが、不良娘はその後ベルサイユのばらと出会い、今ではドル箱事業…。経営の難しさを物語っているようですね。