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ダル・レークの恋

おうち時間に読書や映画鑑賞もよいですが、演劇鑑賞もいかがでしょうか。
と、いうわけで、ワタシが観た舞台のいくつかを紹介していきたいと思います。
この騒動がおさまったら、きっと演劇界も復活すると信じて。

こんなあらすじ

インドがまだ王政を敷いていたころが舞台。インドのカシミール地方にある、ダル湖の湖畔のリゾート地で、貴族の娘・カマラは騎兵大尉のラッチマンという男と恋に落ちた。初めは眉をひそめながらも、ひと夏の恋と黙っていたカマラの祖母だが、避暑が終わり、領地に戻れば、カマラは女官として王宮へ上る。貴族の娘が身分卑しい人物と本気の恋という噂が立ち始め、これは彼女の将来によろしくない、と判断し、カマラにラッチマンとの恋をこっぴどく終わらせるように命じる。
貴族の娘として育っていたカマラには、祖母の命令は絶対。カマラはラッチマンとの別れを決意し、彼とのことは遊びだったと振る。しかし、それだけでは終わらなかった。
側近が仕入れてきた情報で、実はラッチマンはかの有名な詐欺師・ラジエンドラで、貴族の娘をたぶらかし、金品を奪っているというのだ。
真相を確かめるカマラ達。ラッチマン本人に尋ねると、彼は笑ってそれを肯定する。そして、貴族の娘が詐欺師と恋愛関係であったことを言いふらすと脅し、それをしない代わりに…と、あることを要求するのだった。

ここが見どころ

初演が1959年。主演は春日野八千代でしかも脚本は菊田一夫。演劇賞の名前にもなられた、演劇界の大御所の脚本家の作品です。なので、色々と見どころが満載でもあります。

すれ違う男女

ラッチマンとカマラ。このカップルのすれ違いは、それはもう…とにかく見ているこちらがイライラするレベルですごいです。
お互い好きなんですよ。ええ、めっちゃ未練タラタラ…。でも、対面とかプライドとかが邪魔して素直になれない…。
いや、まあ…そんなすれ違いが悲恋性を醸し出しているのですが、いや、それにしても…なんですよ。
身分とかプライドとか…いまの世代や恋愛感にはちょっと古いかなあとは思います。ただ、初演が1959年…君の名は…ってアニメじゃなくて、菊田先生の名作ドラマのほうですが…が流行していたような時代。なので、なんとなくこういうすれ違い方に涙できたのでしょう。
そういうあたりを理解すると、ああ、なるほど…と思います。
あと、ハーレークインとか(笑)。

すみれコードギリギリ

宝塚には、いわゆる「すみれコード」と呼ばれるものがあります。”清く 正しく 美しく”というアレです。だから、まああってもキスシーンくらい??みたいなところがあります。
で。
初演はさすがに知らないのですが、再演バージョンから、まあ、『ご想像にお任せ』的なシーンもあったりしまして…ええ。別名お代官さまシーンと呼ばれていますが。
インドの女性といえば、あの長い布をぐるぐるっと巻いたサリーという民族衣装がありますが。…それをですね、脱ぐんですよ、ええ。そのシーンがいかにも時代劇の「お代官さまっ」「よいではないか、よいではないか」…的なあの帯解きシーンに似てましてねえ…(遠い目)。いや、まあ、そこはかとない色気あるダンスシーンで繰り広げておりますので、絵面がめっちゃ美しいのですが。
…初めて見たとき、純情乙女(?)だった私はうわあああ( *´艸`)となりました。

思わぬ大どんでん返し

身分違う男女の恋のすれ違い…なのですが、ただ、身分差だけで済まないのがこのお話の魅力です。
ラッチマンがその時その時の状況で色々変わるのです、立場が。
初めは騎兵隊長だったのが、国際的詐欺師と言われ、そこからそれをネタに脅す脅迫者、そして、というか実は…というまあ、本当に色々な顔を持っています。
2部の最初のパリで遊ぶ風来坊というのがかっこいいのです。ここ、個人的に好きなシーンです。
まあ、色々な顔を見せるラッチマンですが、その実態は単に一人の女性を素直に愛せない、一途で不器用な男…ってところでしょうか

迫力あるダンスと美しい曲

再演の星組バージョンでは、海外から振り付けの方を呼んで、いくつかダンスシーンを振り付けていただいていました。中でも、2部の冒頭、命がけのダイスでの賭けのシーンは男役の魅力がたっぷりと味わえるものでした。
また、ショーの最初にある大勢でのダンスシーンは、マスゲームのように計算された流れと、仏教とかヒンドゥー教を感じさる…インドが舞台なので意識しているのは当たり前でしょうが…な雰囲気がとても魅力で…。
諸般の事情で、次の再再演の月組では、両方とも別の方の振り付けになっていました。こちらも素敵でしたけどね…。個人的には星組のバージョンが好きでした。
また、主だった曲は初演の頃と変わりがなかったので、菊田一夫先生の美しい歌詞をそのままに。印象深いメロディーとともに心に残ります。また、再演の時に追加された曲も、この作品のイメージそのままの切ない曲になっています。

再演の星組と再再演の月組

私は両方とも生の舞台を観させていただきました。宝塚は代表作と呼ばれる作品がたくさんあり、ベルサイユのばらやエリザベートは特にその中でも代表的なものでしょう。ただ両作品とも、主演のトップスターやその時によって、演出が変わっています。曲を追加したり、ベルばらでは主演のキャラクターも変わってきます。なので、一概に比較はできないし、また、たくさん再演されてきたので、どれをどうというのも難しいというのがあります。
が、この作品は、初演から再演まで何十年と経ているので、比較は初演を観た方しかわからないというところがあったりしますので、対象が2本に絞られるから、比較しやすいのです。
ただ、良しあしの比較、ではありません。
トップのイメージでこうも雰囲気が違うのだなあということです。
ラッチマンとは対照の位置に、ペペルという人物が登場します。カマラの妹が恋人として領地に連れてきた謎の男。しかもラッチマンとは因縁の人物なのですが。
このラッチマンとペペルがトップと2番手の男役が演じるのです。
星組は麻路さきさんと稔幸さん、月組は瀬奈じゅんさんと大空祐飛さん。
なのですが、持っている空気から、星ではラッチマンが黒(陰)のイメージで、ペペルが白(陽)。月組はその逆のイメージを感じました。
でも、ドラマとしてはどちらでも成立していたし、。解釈としては間違っていない…。そんな不思議な空気が魅力の作品ですので、機会があれば、比較して観てみるのもよいかもしれません

今年観劇のチャンスあり

…とはいってお、このご時世なので、宝塚もしばらく休演しているし、色々スケジュールが変更されたりしそうなのですが、秋の全国ツアーがこの作品の予定となっています。
また新しいラッチマン、そして、ダル・レークの恋がうまれるのかもしれませんので、チャンスがありましたら是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

参考資料

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%81%AE%E6%81%8B