中央システム株式会社

逃げるは恥だが役に立つ

ドラマで一世を風靡した作品ですが、原作も無事に完結しました。
コミックですが、内容は今の時代に色々考えさせられるものでした。

ドラマ版逃げ恥

新垣結衣主演のドラマでは、平匡と出会い、偽装?結婚から紆余曲折を経てちゃんと?カップルになるまでが描かれています。

https://www.tbs.co.jp/NIGEHAJI_tbs/

野木亜希子さんの脚本が、原作の雰囲気や描きたいことを丁寧に描いていて、だからのヒット作になったのだと思います。…空飛ぶ広報室のころから野木さんの脚本が好きです。

現実社会の問題を描く

ドラマもですが、主人公のみくりは大学院まだ通うほどの才女でありながら、就職難で正社員にはなれず、派遣社員になります。が、そこで派遣切りに遭います。その後新しい派遣先が見つからず、困っているときに、父親の紹介で、知り合いの家の家事手伝いをすることに。この知り合いが平匡な訳ですが。
年齢的に、みくりが正社員になれなかったのは、あの「リーマンショック」の頃。就職難でフリーターが増えた時代です。…まあそれ以前にバブル崩壊後の超氷河期が一番こういう問題が発生して、今の状態があるのですが。
閑話休題。
いい大学に入り、優良企業に就職し…が日本のスタイルであるなか、大学院まで行ったのに、派遣で事務…。事務は事務で大切な仕事ではあります。が、みくりは大学院で学んだことを生かすような仕事に就いたわけではありません。
そこには「女性」であることも一因があるようです。
男女雇用機会均等と言われていても、まだまだ女性は結婚したら仕事を辞めて専業主婦になるもの、というものが根幹に根付いています。
そういう道もありです。だけど、それは本人の意志であり、望んでそうしているのであって、そこに他者が口をはさむことはあってはならない。けれど、現実的には大学院まで行けば修士課程まで行けばそれなりの年齢となっているから、就職しても結局はすぐに辞めるだろうという安易な考えがあり、それで就職できないとなるのは大問題です。
また、家事も一つの仕事です。労働に対しての対価がないですが。
平匡と出会ったとき、家事代行ということで、行った家事に対してお金をもらっている。結婚も、みくりの家庭の事情や二人の意見の一致で、男女が一緒に暮らすには結婚という名目を必要としているからしよう、みたいな、まあ屁理屈なのですが、そんな感じで始まったので、報酬が最初は発生していたり。
みくりも平匡も理論的というか、ちょっとあたまでっかちに考えるところはありますが、その可笑しさがうまいオブラートになり、重たい話にはなりませんが、ドラマもコミックも、今の社会の問題を浮き彫りにしています。

ドラマ後の二人

ふたりが結婚して、恋愛して(順番が逆なようですが)…のその後がラスト2巻で描かれていますが、それもまた、今の社会の問題をうまく描いています。
みくりと平匡との間に念願の子供が。
共働きをしているため、みくりは産休・育休を。平匡もまた育休をとることで、会社と調整する。。
というのが縦軸にあるのですが。
女性の妊娠と社会の問題、育休の取得の問題、特に男性がとることの難しさ…といった問題を描いています。
確かに育休は女性がとるもの、であるといった感覚が主流ですが、子供は母親だけが育てるものではないですからね。
そして、平匡の会社では、ハラスメント…というには少し軽めに描かれていますが、「多様性」をどう受け止めるか、自分の考えと異なる人とどうつきあうのか。。。そんな問題が発生していたり。
みくりの叔母、百合も子宮がんがみつかり、未婚であることの悩み、親友のカミングアウトからの同性愛の問題…。2巻しかないのに、内容はてんこ盛りです。

とにかく読んでみてください

深い問題ですが、コミックであること、そしてみくりたちキャラクターの個性で、シリアスに描いています。さらっと読めますが、読後に色々考えさせられること間違いなしです。
できれば、ドラマで描いていた最初から、コミックで堪能してください。
ドラマとはまた違った魅力が見えてくると思います。