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小さな恋のものがたり

久々に新作が刊行されました。こんな時代の中でも、チッチはチッチとして生きていて、少しほっとします。

小さな恋のものがたり とは

漫画家・みつはしちかこさんの代表作です。
背が低くて、頭はあまりよくないけれど、可愛いもの・綺麗なものがだいすきで、手芸も特異な女の子・チッチと、背が高くて頭も運動神経もよいけれどクールなサリーの恋愛模様を中心に、個性豊かな彼らの友達や親などとの日常生活を描いたハートフルなお話です。
特に長いストーリーではなく、小さなお話を徒然と描いているので、気を楽にして読むことができます。
また、チッチの性格からとても季節に敏感で、自然に咲くオオイヌノフグリに春を感じたり、大きなかき氷をキーンと頬張ったり、金木犀の香りに誘われたり…。そんな、最近忘れがちな風景を思い起こさせるような作品となっています。
お話の合間にある美しい言葉でつづられた、やさしい詩も素敵です。

長年愛されている作品

私が生まれる前からの作品…なのです。母が高校生の時からの作品…。
巻数が少ないのでそんな感じはしませんですが。
数年前までは、毎年5月に刊行されていて、サクランボの季節になると、ああ新刊が出るんだなあと思ってました。
みつはしちかこ先生がご高齢で無理なく出版できることや、ある程度お話に区切りがついた…と先生本人が思われたあとのお話だという事からか、最近は数年に一度になっていたりします。
母が読み始めたのは、友達から自分と母によく似たキャラクターがでてると紹介されたから、だそうで。その友達がチッチのように小さくて、母が親友のトン子ちゃんのようにふくよかな感じで、とても仲良くて…ほんとうにそっくりだったそうで。その友人という方は若くして亡くなってしまったそうで、いまでも母はこの本を見ると懐かしそうにしています。

一度は完結したけれど…

今回刊行されたのは45巻ですが、43巻で一旦完結…したはずでした。
そのラストで、サリーは留学を決意し、そのために、二人は別れることに、という感じでした。
…え?
…ええ?

読み終えた瞬間、私は呆然としてしましまいました。
だって、このお話は二人の恋のお話だし、ぶっちゃけ、過去に一回距離を取ったこともあったけど。。。
(このお話はいわゆるサザエさん展開で、ずっとキャラクターたちは高校生であるので、考えだすと矛盾もあったりしますが。。。)
でも、最終巻と銘打って、さあ読んだら最後にお別れの恋愛もの…って。。
と、ショックを受けていたのは私だけではなかったようで、熱望があったらしく、その後こうやって続いていたりします。
でも。
この巻の最後、留学先から戻ってきたサリーが、お祭りにふらっとやってきます。もしかしたら、チッチがいるかもしれない。いたら挨拶したいけど、いなかったらそれはそれで、と軽い感じでやってきたところを岸本さんと松井さんというチッチの友達にばったり出くわします(岸本さんは以前はなんとなくチッチを好きかも、という感じだったので、友人…というとちょっと疑問ですが)。その時、チッチが近くにいるはずだと二人は引き止めますが、サリーはそのまま帰ってしまいます。釈然としない二人。読者もですが。
でも、その帰り道、サリーはばったりチッチに会ってしまいます。
なんとなく会話を交わす二人。
そして、別れ際、「待たなくていいから。」とサリーはいうのです。
ちょっと待て?
チッチは一途な子なんです。そんな事言われて、はいそうですかってなるもんですかあああ(ちゃぶ台返し)!
結局サリーはチッチに甘えてるな、この野郎…(口が悪くてすいません。。)と思ってしまいました。
サリーの不器用な優しさでそう言うのはわかりますけどね??でも、チッチは待つと思うのです。
まあ、なんやかんやで結構モテるので、他の男の子の影がちらほらあったりしますが、それでもサリーが一番好きなんですよね…。
と、サリーに対してちょっともやもやしました。

優しい恋の聖書

まあ、サリーに対しては色々思うところがあったりしますが、チッチの一途さは胸がキュンキュンしますし、登場するキャラクターの恋愛模様はどれも甘酸っぱくて優しいのです。こう、もうちょっとみんなグイグイ言ってもいい気がしますが、そう思うのは最近の恋愛ものを読みすぎたせいですね。。。
でも、恋の甘酸っぱくてちょっと苦くて、でもとびっきり美味な、そんな優しくて美しい純愛を感じるには、この作品が一番な気がします。
本当に、美しい、抒情詩のような恋のおはなしです。
たまにはこういうお話もいかがでしょうか?