中央システム株式会社

黄緑のネームプレート

毎年恒例の爽香シリーズ、やっと購入&読破しました。本屋で販売してるのを見たとき、最近色々余裕なくしてると、ちょっと茫然…。何故九月に気づかなかったんだろう…シリーズ始まってから初めてその月を買い忘れていました、はい。

爽香シリーズ

赤川次郎の数あるシリーズの中でも、すっかり古株になりましたね。一年に一回、九月に光文社から刊行される「青春ミステリー」です。普通、探偵やその周りの人々はあまり歳を取らないものですが、このシリーズは、一冊ごとに歳をとるので、主人公の爽香シリーズも既に46歳…。
15歳から重ねているので、「青春」だったのですが、まあ、30年…恋して結婚して子供産んで仕事をバリバリこなす、成熟した女性になってしまいましたね。相変わらず事件に巻き込まれるのは変わりありませんが…。
登場人物も、徐々に変わっていくのも、歳を取っていくシリーズならではの特徴です。
爽香の夫、明夫は一作目からですが、当時は爽香のクラスに転校してきた少年で。高校で爽香と付き合いだすも、母親の反対などがあり別れてしまう。そして、大学時代、不倫した教授夫人を殺害し、犯人として逮捕されたり、しかもその事件を暴いたのが爽香だったりしますが、健気に待つ爽香に再び心惹かれ、出所後結婚。珠美ちゃんという娘ももうけますが、相変わらず女性にモテるようで…チラチラ明夫を好きになる女性がでてきます。
中学時代からの親友、今日子はシングルマザーとなり、娘を育てながら女医として活躍。いまだに事件に巻き込まれる親友の心配をしています。
就職先のホームで知り合った女優の栗崎さんや、中学時代の恩師など、物語に華を添える人たちも。
中学から高校、大学、そして社会人。様々な事件に巻き込まれ、たくさんの人々に出会い、別れ…がリアルに描かれているのが、このシリーズの特徴でもあるかもしれません。
しかし、年に1回でも…事件には巻き込まれるのは…いやだなぁ(笑)。

今回のあらすじ

爽香46歳。久々の休暇に家族旅行を楽しんでいたのだ…が、娘の珠美が自殺未遂の女性を見つけ、助け出すハプニングが。彼女は色々と事情があるようで、宿泊先のホテルからも事件は内密に、という事を言われる。爽香達は勿論公言するつもりもなく、また、助けた相手にも名前を明かさず帰る事に。そして、そんな事を忘れ、日常にもどったのだが、その自殺未遂をした女性は爽香の甥の彼女の仕事の知人だった。ライターである女性の原稿を取りにいき、謎の黒服を見かけ、怪しんだことを爽香に話す。そして、その頃、政権に批判的なコメントを出すので有名なニュースキャスターが突然の降板、そして事故とも自殺ともとれる謎の死を遂げる。ニュースキャスターの降板には、時の政権に近いライターの影の圧力がある、そのライターが自殺未遂をした女性の不倫相手だった。
複雑に絡む人間関係と、官邸の権力という欲の渦に爽香は巻き込まれていき…。

点と点が繋がり、線になる

相変わらず赤川次郎はこういう展開は上手いなぁと思いました。事件や人はあちこちで点として描かれていて、爽香が動く事で線になり、ひとつの絵になっていくような、そんな展開。爽香も知らず知らずのうちに巻き込まれる感じが自然で、無理やり感もなく。
だから、一般企業のキャリアウーマンの爽香がどういった展開で事件に入り込んでいくか、とワクワクしていたら、あら、気づいたら巻き込まれて…なので、楽しいのですが。
ただ、そんな爽香の周りにいる人々…家族や友人は気が気じゃないですよね(笑)。最近は巻き込まれるのはわかってるから、無理だけはしないで、と悟っていますが。

爽香がしっかりしているから

主人公なので、事件に巻き込まれるのは宿命(…)ですが、竹を割ったような性格、さっぱりとした物言い、回転の早い頭脳…。とにかくしっかりしつます。
だからこそ、第一作で、友人が不審の死を遂げた時、悲しむ前に真相を知ろうとするのですが…しかも、その理由が中学生にしてはキツい事なのに、きちんと受け止められたのでしょうが。
ただ、この爽香の「しっかりした」性格が途中から個人的に…となっていきました。
しっかりしているから、みんなが頼る。ちょっとくらいなら、と思いますが、両親や恩師まで…となってくるのが、同世代として、というか、同世代だからこそ、そこまで頼らなくても…という気持ちにさせました。旦那も旦那で、浮気…まではいかないですが、チラチラ女性の影がちらついたり…。
まあ、小説というフィクションの話なので、ムキになる事ではないんですけどね。同世代であるし、同じ働く主婦だし、旦那が同じ職業(明夫も運転手)なので、ちょっと親近感湧きすぎなのでしょうけれど。
今回の話は久しぶりにそういうモヤモヤってする展開はなかったので、楽しく読めました(笑)。
いや、仕事は更に責任重大なポジションになり、田端社長からの信用も更に、なのですが。
何でもかんでも爽香宜しく、がなくなって、本当に偶然巻き込まれる感じで、だからそこサラリと読む事ができました、はい。

おすすめの巻

爽香シリーズも今年で31巻…31年も読んでいるんですなぁ…。
なので気になる、となっても、どれを読めば…になると思いますので、とりあえずこの二冊は、を。

•若草色のポシェット

記念すべき第一作。爽香がまだ中学生の頃の事件です。前述したように、爽香の友人が不審な死を遂げたのを解決しょうとする話です。その死の真相は、中学生にはちょっとキツいものでした。ただ、ミステリーとしても本当に楽しくて、赤川次郎の作品としてもおすすめだったりします。

•暗黒のスタートライン

爽香の大学の教授夫人が殺される事件が発生。犯人として、元カレの明夫の名前が上がる。爽香は明夫を匿うけれど…という展開で、本格的なミステリーになってます。ラストは切なく、でも爽香らしい決断に、涙は必須です。

勿論、これ以外も面白い話はありますので、できれば若草色のポシェットから、歳をおっていくように全てを読むのが一番ではあります。
大丈夫、まだ来年九月まで、まだまだ時間はありますから(笑)