中央システム株式会社

本日は、お日柄もよく

久々に、色んな意味で面白い、という本に出合った気分です。なんでもっと早く読まなかったんだ、私。

あらすじ

主人公のこと葉は、家族代表として参列していた幼馴染で初恋の相手である厚志の結婚式で、久遠久美という女性と出会う。
彼女は、政治家だった厚志の亡き父の伝説のスピーチを作り上げた女性だった。
日本ではあまり知られていない、スピーカーという仕事。
自分でスピーチするだけでなく、他人のスピーチの原稿を考えたり、そのアドバイスをしたりするのが主な仕事。
そんな話を聞いたとき、親友の結婚式でスピーチをする事を思い出したこと葉は久美からスピーチのついて学ぶことに。
そして、その助言を聞きながら、スピーチの面白さに気づいていく。
そんな時、勤めていた会社の記念事業に参加することになったこと葉。
一介の総務のOLだった彼女を抜擢したのは、ワダカマこと和田日和足(かまたり)。厚志とはライバル会社の広告会社のエースで、今回の事業のオブザーバーに就任していたワダカマは、こと葉がした友人の結婚式のスピーチを聞いたことから、この抜擢を決めたのだ。
そんな時、政界が動くのではないか、という噂がたつ。
野党党首のスピーカーとして活躍する久美は、その動きから仕事がせわしなくなる。
しかも、厚志が亡父の弔い合戦という名目で、選挙立候補のオファーが舞い込む。悩んだ末に厚志はこのオファーを受けることにし、そのスピーチの相談役としてこと葉がたつことに。
ワダカマは与党の縁戚にあり、そちらのオブザーバーとなっている。
その与党はかつての影響力は影をひそめ、いよいよ政権交代という文字が浮かんでくるなか、こと葉はスピーチを考えていく…。

ここが読みどころ

スピーチの極意

結婚式のスピーチや、企業の記念事業における代表取締役の挨拶、さらには政治家の演説までいろいろなスピーチの話が出てきます。
それがまた、とても印象的です。こんな風に言葉を操ることができたらすごくいいなあ、と思うくらいです。とにかく、文章の勉強になります。
人生それなりに長くなると、どこかでスピーチなんてさせられたりするので、参考書のようになるかも…。

言葉の力

こと葉は厚志の亡父の最後の議会演説に感動しました。がんを患い、これが最後だとわかっているからこそ、なのかもしれませんが、その力強い言葉に人々を魅了していきます。
また、その厚志もそんなこと葉の考えたスピーチで、支援者に熱く訴えるのですが、その言葉の選び方も考えられていて、言葉の力のすごさを感じました。

時代を動かす力

今回、スピーチの依頼する相手の名に、政治家があります。キーワードが「政権交代」というあたりから、推して知るべしなのですが。
確かに美辞麗句を並べるだけでは政治家の仕事って??ってなります。その発した言葉を実現するのが仕事なのですから。
ただ、いかな実力があっても、民衆に訴えるだけの言葉を持っていなくては意味がないわけで…。政治家の難しさ、面白さ、複雑さも感じられるお話でした。

ほんのりほのぼのな…

厚志には失恋しますが、その後新しい運命の出会いをします。同じ仕事で、仲間だったりライバルだったりする相手。
初めはちょっといけ好かない相手…のように感じた相手。まあ、恋愛対象になる王道といえば王道なんですが、それがまたこの話にはちょうどいい感じです。
初恋の人のライバルで、仕事の仲間で、自分のライバルで。
ライバル…なんです。だから、対立する相手だけれど、気になる相手でもあったり。ワダカマはこと葉をどう思っているのか、は描かれていませんが、多分最初にスピーチを聞いた時から、ひとめぼれ…否ひと聴きぼれしていたのかもしれません。だから、こと葉がライバルとにらんでいても、ちょっと余裕だったり、考えを誤解されて焦っていたり…。
この二人の間は、途中に色々あってのラストだったのでしょうが、その色々部分はご想像にお任せなので、ちょっと気になります。
ちなみにラストシーンはとても感動的でした。

原田マハさん

今回で2冊目になるのですが、個人的にはとても読みやすくわかりやすい文章なので、するすると読みやすいです。
特に今回はスピーチの部分など、とても言葉が印象的です。
政治家が絡んでくるようなお話なので、難しい言葉を使うのか、とも思ったのですが、あくまでこれはスピーチの力がメインのお話なので、さほど難しくないです。
他にもいろいろあるようなので、読んでみようかと思います。
…その前に積んである本を消化ですよね、ですよね…。